<弊社参画前の課題>
当該SaaS企業では、事業拡大に伴うバックオフィス業務の肥大化が深刻なボトルネックとなっていた。 特に稟議・承認フローにおいては、各部門が独自に導入したローコードツール(n8nなど)や旧来のワークフローシステム(Kickflow)が乱立。管理不在の「野良ワークフロー」が多発し、エラー時のリカバリも属人化していた。 また、全社的に「生成AIによる業務効率化」を掲げていたものの、実態はチャットボットによる質疑応答レベルに留まっており、複雑な判断やシステム操作を伴う業務プロセスの自動化(エージェント化)には至っておらず、現場の疲弊感が高まっていた。
<支援内容>
1. 現状分析・基盤リフト(既存資産のモダナイズ)
まず、各所に散在していたn8nおよびKickflow上のワークフローを棚卸し、ブラックボックス化した処理を解析。 不安定であったオンプレミスや個人のローカル環境で稼働していたフローを、GCP (Google Cloud Platform) 上のマネージドな環境(Cloud Run)へ移行・集約した。これにより、スケーラビリティの確保と監視体制(Cloud Logging/Monitoring)を確立し、業務停止リスクを排除した。
2. アーキテクチャ構築(自律型AIエージェント基盤の開発)
単なる自動化ではなく、「判断」を委譲するための共通基盤を Python および LangChain を用いて設計・開発。
LLMがユーザーの指示や業務イベントをトリガーに、適切なツール(API、DB、社内Wiki)を自律的に選択・実行する「ReAct型エージェント」のアーキテクチャを採用。 ハルシネーション(嘘の回答・誤動作)のリスクを最小化するため、Pydantic による厳格な出力バリデーションと、Human-in-the-loop(人が承認するステップ)を容易に組み込める設計とした。
3. ドメイン特化フローの実装(財務経理プロセスの刷新)
基盤の実証として、最も工数削減効果が見込まれる財務経理部門のフロー構築を主導。 請求書の受領から、OCRによる読み取り、AIによる勘定科目・部署の推論、ERPへの仮登録、承認依頼までを一気通貫で自動化するパイプラインを構築。特にインボイス制度対応などの複雑な法要件チェックをAIエージェントの推論プロセスに組み込むことで、経理担当者の一次チェック工数を削減。
4. 運用・ガバナンス(MLOps/LLMOps)
継続的な精度向上のため、エージェントの実行ログ(トレース)を蓄積・評価する LLMOps の仕組みを導入。 プロンプトのバージョン管理や評価セットによるリグレッションテストを自動化し、エンジニア以外でも安全にワークフローを改善できるDevOps体制を整備。
<実績・成果>
- 技術的成果
- 散在していた50以上の野良ワークフローをGCP上の共通基盤へ統合し保守運用コストを削減。
- 独自開発したAIエージェント基盤により、従来はRPAで対応困難だった「非定型業務(曖昧な判断を含む処理)」の自動化率を向上。
- ビジネス・組織的成果
- 財務経理部門における月次請求書処理時間を削減し決算早期化に貢献。
- 複雑な承認フローの停滞時間削減により、全社的な意思決定スピードを加速。
- 「AIに業務を任せる」ための標準パターンが確立され、他部門(人事・法務)へのスムーズな横展開へとご活用いただいた。