<弊社参画前の課題>
暗号資産のコピートレード機能を提供する当該プラットフォームでは、ユーザーがフォローできる「プロトレーダー(インフルエンサー)」の品質担保が深刻な課題となっていた。 一部の悪質なトレーダーが、SNSで集客した後に自身の保有トークンをフォロワーに売りつける「Exit Liquidity(換金売り)詐欺」や、意図的な価格操作(Pump & Dump)を繰り返しており、ユーザーの資産損失とプラットフォームの信頼失墜を招いていた。 運営チームはSolana Explorer(Solscan等)を目視してウォレットの挙動を確認していたが、高速なSolanaチェーン上の膨大なトランザクションを目検で追うことは不可能に近く、リスク判定の基準も属人化しており、スケーラビリティが完全に欠如していた。
<支援内容>
1. 現状分析・ロジック策定(On-Chain Forensics)
過去に詐欺行為を働いたウォレットのトランザクションパターンを解析し、リスク検知に必要な「シグナル」を数式化した。 単なる損益だけでなく、「購入から売却までの時間差(秒単位での自動売買痕跡)」や「売却直後の資金移動(利益の分散・洗浄)」といった、悪意あるBot特有の挙動を特定。これを「Risk Score」として定量化するアルゴリズムを設計した。
2. アーキテクチャ設計・実装(Python / Solana RPC)
高負荷なSolanaチェーンのデータを安定的かつ高速に処理するため、堅牢なデータ取得基盤を構築。
- Data Ingestion: 公開RPCのレート制限を回避するため、Helius等の専用RPCノードを選定。Python を用いて直近のトランザクションを非同期で高速取得するパイプラインを実装。
- Transaction Parsing: Solana特有のバイナリ形式の命令データ(Instruction Data)をデコードし、DEX(Raydium, Jupiter)とのインタラクションを正確に抽出。「スワップ」「流動性提供」「承認(Approve)」の種別を判別可能に。
- Heuristic Analysis: 定義したリスクロジックをコード化。
- Fast Sell Ratio: トークン購入後、数秒以内に売り抜ける高頻度Botの判定。
- Fragmentation Check: 売却益を即座に複数の小口ウォレットへ分散送金する資金洗浄パターンの検知。
- Slippage/Liquidity: 流動性を意図的に引き抜く(Rug Pull)挙動の監視。
3. 運用・拡張性の確保
- 単発のスクリプトで終わらせず、将来的なAPI化やバッチ処理を見据えたモジュールを設計。
- DEXのルーターアドレスやCEX(中央集権取引所)のホットウォレットアドレスをリスト化して判定ロジックに組み込み、トークンの最終的な出口(Exit)がどこかを追跡可能に。
- コンソール上で即座に「Safe / Flagged」の判定と、その根拠となるリスクスコアを表示するCLIツールとして提供し、現場担当者がコマンド一つで調査を完結できる環境を実現。
<実績・成果>
- 技術的成果
- 従来1件あたり30分〜1時間かけていたウォレット調査を、スクリプト実行により10秒以内の完結を実現。
- 複雑なOn-Chainデータから「資金分散(Fragmentation)」や「承認スパイク(Approval Spike)」などの高度な不正パターンを検出可能に。
- ビジネス・組織的成果
- 悪質トレーダーの登録を未然に防ぐフィルターとして機能し、エンドユーザーの資産保護に直結。
- 調査業務の属人化を解消し、オンチェーン分析の知見がないオペレーターでもリスク判定が可能となったことで運営コストを削減。