役員会議でAI検索の話題が出た翌日「うちの会社はChatGPTでどう紹介されているのか調べておいて」と頼まれた。そんな相談をこのところ立て続けにいただきます。頼まれた側は困ります。検索順位ならツールで確認できますが、ChatGPTの回答をどう調べればいいのか、どこにも標準的な手順が載っていないからです。

安心してください。特別なツールがなくても、手作業で現状をひととおり確認する方法はあります。この分野は「LLMO対策」や「AIO対策」と呼ばれ始めていますが、対策の前にまず現状を知るのが順序です。ここでは質問文の作り方から記録の付け方まで、実際に手を動かせる粒度で説明します。あわせて、手作業で続けた場合にどこで限界が来るのかも正直に書きます。ツールや外部サービスにお金をかけるかどうかは、その限界を体感してから判断すれば十分です。

最初のつまずき:「自社名を聞く」のは調べ方として間違い

多くの方が最初にやるのは、ChatGPTに「株式会社○○について教えて」と自社名を直接聞くことです。気持ちは分かりますが、この聞き方では知りたいことが分かりません。社名を知っている人はすでに指名検索してくれる人で、AI検索で新しく接点を持ちたいのは社名をまだ知らない見込み客だからです。

確かめるべきは「見込み客が買う前に聞きそうな質問」に対して自社が出てくるかどうかです。社名を含まない購買文脈の質問を10〜20本作りましょう。次の4タイプで考えると作りやすくなります。

質問タイプ質問文の例(製造業向け在庫管理SaaSの場合)確かめられること
推奨系「中堅製造業におすすめの在庫管理システムを教えて」候補として名前が挙がるか
比較系「クラウド型在庫管理システムを比較して。それぞれの強みは?」比較の土俵に乗っているか
課題解決系「棚卸差異が減らない。原因と解決策は?」課題起点の回答で言及されるか
選定基準系「在庫管理システムを選ぶときの基準は?失敗しない選び方を教えて」自社の強みが基準として語られるか

質問文はお客様が実際に使う言葉に寄せてください。営業やカスタマーサポートに「お客様は最初どんな悩みを口にしますか」と聞くと、社内の人間では思いつかない言い回しが集まります。ここで作った質問リストは今後ずっと使い回す資産になるので、思いつきで打ち込まずに先にリスト化しておくのがコツです。

エンジンごとにどう確認するか:4つのAI検索での手順

確認するエンジンはChatGPT・Gemini・Perplexity・GoogleのAI Overviewsの4つで十分です。それぞれ無料で確認できますが、注意点が異なります。

エンジン確認手順注意点
ChatGPT一時チャット(履歴に残らないモード)で質問文を1本ずつ入力普段のアカウントで聞くとメモリ機能が過去のやり取りを反映し、素の回答にならない。ウェブ検索が動いた場合は出典リンクも記録する
Gemini新規チャットで同じ質問文を入力Googleアカウントの利用履歴が反映される場合がある。可能ならシークレットウィンドウで
Perplexity同じ質問文を入力し、回答本文と出典リストの両方を確認出典URLが明示されるので、どのページが引用されたかまで記録できる。4つの中で最も分析しやすい
Google AI OverviewsGoogle検索に質問文を入力し、検索結果上部にAIによる概要が出るか確認そもそもAI概要が表示されないクエリも多い。「表示なし」自体も記録に残す

共通のコツは、自分の利用履歴を回答に混ぜないことです。特にChatGPTのメモリ機能は要注意で、あなたが日頃自社の資料作りに使っていると、自社をよく知った状態の回答が返ってきます。それは見込み客が見る回答とは別物です。

記録はスプレッドシートで:そのまま使える列設計

回答を眺めて「うちは出てこなかった」で終わらせると、上司への報告も次回との比較もできません。1回の確認を1行として、スプレッドシートに次の列で記録します。

列名記入内容記入例
確認日質問した日付2026-07-18
エンジン使ったAI検索の名前Perplexity
質問ID質問リストの通し番号Q03
自社言及あり/なしあり
言及順位挙がった社名の中で何番目か3番目/5社中
言及内容の要約どう紹介されたか。事実誤認があればその旨も「中堅向けで導入が速い」と紹介。料金の記述が旧プラン
出典URL引用されたページ(分かる場合)自社導入事例ページ/比較メディアA
競合言及挙がった競合名B社、C社

特に価値があるのは「言及内容の要約」と「出典URL」の2列です。単に出る出ないだけでなく、古い料金や終売した製品名で紹介されていないか、どのメディアやページが引用元になっているかが分かると、次に打つ手が具体的になります。競合ばかり引用している比較メディアが見つかれば、そこへの掲載が課題だと分かります。

やってみると分かる手作業の限界:回答は揺れ、工数は掛け算で増える

ここまでの手順で、初回の現状把握はできます。しかし実際にやってみると2つの壁に当たります。

1つ目は回答の揺れです。AIの回答は確率的に生成されるため、同じ質問を同じ日に2回聞いても挙がる社名や順番が変わることがあります。海外のAI検索計測の解説でも、同一クエリでも時間が変われば回答も引用元も変わりうるため、1回の結果ではなく繰り返しの計測で分布として捉えるべきだとされています(Search Engine Land)。つまり1回きりの確認で「うちは出ない」と結論づけるのは早計で、最低でも同じ質問を2〜3回試す必要があります。

2つ目は工数です。1つの質問を1つのエンジンで確認して記録するまで、慣れても1件あたり3分程度かかります。これがエンジン数×質問数×繰り返し回数の掛け算で増えていきます。

やり方確認件数の内訳1回あたりの目安工数週次で続けた場合(月あたり)
最小構成2エンジン×10問×1回=20件約1時間約4時間
標準構成4エンジン×15問×1回=60件約3時間約12時間
揺れ対応込み4エンジン×15問×3回=180件約9時間約36時間

回答の揺れまで考慮した計測を週次で続けると月36時間、ほぼ1週間分の業務時間に相当します。ほかの業務と兼任のひとりWeb担当が続けられる作業量ではありません。初回はやり切れても、2回目以降が続かず「あのとき1回調べたきり」になるのが典型的な失敗パターンです。

限界を踏まえて、どう続けるか:3つの現実的な選択肢

続かないやり方を組むより、続けられる範囲に最初から絞るほうが結果的に多くの情報が得られます。選択肢は3つです。

  • 範囲を絞って自分で続ける:エンジンはPerplexity(出典が見える)とChatGPTの2つ、質問は反応の差が出た10本に絞り、頻度は月1回にする。上の表の最小構成なら月1時間で済み、四半期ごとの変化は十分追えます
  • 計測ツールを使う:AI検索での言及を自動で継続計測するツールが国内外で増えています。ただし月額数万円からの年契約が多く、効果測定の標準指標もまだ固まっていない分野なので、手作業で1度現状を見てから検討しても遅くありません
  • 初回の現状把握だけ外部に任せる:継続計測の前にまず今どうなっているかを知りたい場合は、診断だけ外部を使い、以降の運用は絞った手作業で回す組み合わせも成り立ちます

なお現状把握はあくまで出発点です。調べた結果「出てこない」「古い情報で紹介されている」と分かったら、次は引用されるサイト側の改善に進みます。全体の進め方はLLMO対策は何から始めるかで、AI向けにサイト情報を整理する実装はllms.txtの書き方で詳しく説明しています。

手作業での確認に限界を感じたら、計測を自動化する道具に任せる選択肢もあります。AI検索での見え方を毎週計測するツール(AIVIS STK)なら、同じ質問を主要エンジンに定期的に投げて、自社と競合の登場を記録し続けられます。まずは無料診断で現在地を一度つかむところから始めるのがおすすめです。

まとめ

自社がChatGPTでどう紹介されているかは、社名を含まない購買文脈の質問を10〜20本作り、4つのエンジンで試してスプレッドシートに記録すれば、ツールなしでも確認できます。ただしAIの回答は同じ質問でも揺れるため1回の結果では判断できず、揺れまで考慮した週次計測は手作業では月36時間規模になります。初回の現状把握は手作業でやり切り、継続は月1回×2エンジンなど続く範囲に絞る。この組み立てが現実的です。

「まず今どう出ているのかだけ知りたい」という方向けに、当社では主要AIエンジンでの言及状況をまとめてお返しする無料LLMO診断を用意しています。手作業で始める前の現在地確認としてお使いください。データ活用全般のご相談はEmpower STKでも承っています。

よくある質問(FAQ)

Q. ChatGPTで自社が全く出てきませんでした。すぐに何か対策すべきですか?

A. まず同じ質問を日を変えて2〜3回試してください。AIの回答は揺れるため、1回出なかっただけでは「出ない」と確定できません。複数回試しても出ない場合は、競合がどのページを引用されているかを確認し、引用されやすいコンテンツの整備から着手するのが順序です。

Q. 確認は無料プランのChatGPTでもいいですか?有料版と回答が違いませんか?

A. 無料プランで問題ありません。プランによって使えるモデルは異なりますが、見込み客の多くも無料または一般的なプランで質問するため、むしろ実態に近い確認になります。それよりもメモリ機能や履歴の影響を避けるため、一時チャットで素の状態を確認することのほうが結果を左右します。

Q. AI検索からの流入はアクセス解析で測れますか?

A. 一部は測れます。GA4の参照元にchatgpt.comやperplexity.aiが現れるので、リンク経由の訪問は把握できます。ただしAIの回答内で名前だけ紹介されリンクが踏まれないケースは流入データに残りません。だからこそ回答の中でどう言及されているかを直接確認する、この記事の手作業計測に意味があります。

Q. 質問文は毎回変えたほうがいいですか?

A. 変えないでください。定点観測は同じ質問文を使い続けて初めて比較できます。質問文を変えると回答の変化が「自社の見え方が変わった」のか「質問が変わった」のか区別できなくなります。新しい質問を試したいときは既存リストに追加し、既存の質問文は残したまま運用してください。