GA4を開くたびに自然検索のセッションが少しずつ減っている。Search Consoleを見ても順位は大きく崩れていないのにクリックだけが細っていく。上司に理由を聞かれても「AI Overviewsのせいかもしれません」としか答えられず、その根拠を示せない。ひとりでWeb担当を任されている方から、この数か月で最もよく聞く悩みです。数字が減ること自体よりも、原因が特定できないまま減り続けることのほうがずっと苦しいものです。
幸い、AI Overviewsの影響かどうかはSearch Consoleである程度切り分けられます。そして影響があると分かった場合の打ち手も、方向性は整理されてきました。順番に確認していきましょう。
AI Overviewsで検索結果に何が起きているのか
AI Overviews(AIによる概要)は、Google検索の結果ページ最上部にAIが生成した回答を表示する機能です。米国では2024年5月に一般公開され、日本でも2024年8月から表示が始まりました。検索した人はページを開かなくても概要だけで疑問を解消できるため、その下に並ぶ通常の検索結果はクリックされにくくなります。いわゆるゼロクリック検索が増える構造です。
影響の大きさについては出典つきの調査がいくつか出ています。米国のPew Research Centerが2025年7月に公表した調査では、約900人の米国成人による約6万8千件のGoogle検索を分析した結果、AI Overviewsが表示されない検索ではユーザーの15%が検索結果のリンクをクリックしたのに対し、表示された検索では8%まで下がりました。さらにAI Overviews内に出典として載ったリンクがクリックされたのは約1%にとどまります。SEOツール大手のAhrefsも自社データで検証しており、2025年4月の調査ではAI Overviewsが表示されるキーワードで検索1位ページのクリック率が34.5%低く、2025年12月のデータを使った更新調査では差が58%まで広がったと報告しています。
ただしこれらの数字は「AI Overviewsが表示された検索結果に限った話」です。Pewの調査は米国のデータであり、日本の全サイトの流入が同じ割合で減るわけではありません。AI Overviewsは情報収集型の検索で表示されやすく、あなたのサイトへの影響はどのクエリで流入を得ていたかによって大きく変わります。だからこそ、次の切り分けが必要になります。
本当にAI Overviewsのせいなのかを切り分ける手順
切り分けの軸はシンプルです。AI Overviewsの影響であれば「表示回数と順位は維持されているのにクリック率だけが落ちる」形で現れます。表示回数ごと減っているなら検索需要の減少やインデックスの問題、順位が落ちているなら通常のSEO上の問題で、AI Overviewsとは別の話です。Search Consoleで次の順に確認してください。
| 手順 | 見る場所 | 確認すること | 読み取り方 |
|---|---|---|---|
| 1. 全体の期間比較 | 検索パフォーマンス > 期間を比較 | 直近3か月と前の3か月で表示回数・クリック数・CTR・平均掲載順位を並べる | 表示回数も減っていれば需要減やインデックスの問題を先に疑う |
| 2. クエリ単位の抽出 | クエリタブ(比較モードのまま) | CTRの差分で並べ替え、表示回数が維持されクリック率だけ落ちたクエリを拾う | 該当クエリが多いほどAI Overviewsの影響の可能性が高まる |
| 3. 順位の確認 | 同じクエリの平均掲載順位 | 抽出したクエリの順位が落ちていないか | 順位が下がっていれば通常の順位下落。リライトや競合分析で対処する |
| 4. 季節要因の除外 | 期間を比較 > 前年同期 | 前年の同じ時期にも同じ谷があるか | 毎年同じ形で減るなら季節要因。AI Overviewsと混同しない |
| 5. 実際の検索画面 | Googleで該当クエリを検索 | AI Overviewsが表示されるか、自社が出典に入っているか | 表示を確認できれば影響の裏づけになる。シークレットウィンドウで確認する |
手順2で拾ったクエリを眺めると、傾向が見えてきます。「〜とは」「〜 やり方」「〜 違い」のような情報収集型のクエリに偏っているはずです。Ahrefsの調査でもAI Overviewsが表示されるキーワードの99.2%は情報収集型でした。逆に商品名や社名での指名検索、比較検討の最終段階のクエリは影響を受けにくい領域です。どのクエリ群が削られているかを特定できれば、上司への報告も「情報収集型クエリのCTRが平均◯ポイント下がっており、AI Overviews表示の影響と考えられます」と根拠つきで言えるようになります。
影響が確認できたときの打ち手を3方向で考える
切り分けの結果、AI Overviewsの影響が濃厚だと分かったとします。ここからの打ち手は「引用される側に回る」「検索に依存しない流入を育てる」「引用されたときに伝わる形で書く」の3方向で整理すると迷いません。
| 方向性 | 具体的な施策 | 期待できること |
|---|---|---|
| 引用される側に回る | 質問に直接答える段落を作る/見出しを検索意図に対応させる/一次情報・独自データを載せる/FAQと構造化データを整える | AI Overviewsの出典に選ばれ、概要経由の認知とわずかな流入を得る |
| 指名検索・直接流入を太らせる | メールマガジン・SNSで読者と直接つながる/事例やセミナーで社名を覚えてもらう/ブックマークしたくなる定番コンテンツを作る | Googleの仕様変更に左右されない流入基盤ができる |
| 引用されても伝わる書き方 | 本文中に社名・サービス名を自然に含める/「当社の調査では」のように出所を明記する/固有名詞つきの独自の数字を持つ | 本文だけが引用されても、どこの情報かが読者とAIに残る |
引用される側に回る:AIが拾いやすい記事に整える
AI Overviewsは既存の検索インデックスとランキングを土台にしているため、特別な裏技があるわけではありません。基本は「質問に端的に答えている記事」が拾われやすいという素直な話です。具体的には、見出しを読者の質問文に対応させ、その直後の段落で先に答えを書き、根拠や手順を続ける構成にします。定義を問われる記事なら冒頭近くで「◯◯とは〜です」と一文で言い切る。手順や比較は表で示す。この構成は人間の読者にとっても読みやすいため、無駄になりません。こうした取り組みはLLMO(大規模言語モデル最適化)と呼ばれ、対策の全体像はLLMO対策の全体像を整理した記事で詳しく解説しています。
ただし引用されても流入が大きく戻るわけではないことは、先ほどのPewの数字(出典リンクのクリックは約1%)が示すとおりです。引用獲得は流入回復の切り札ではなく、検索面での露出と認知を維持する守りの施策と位置づけるのが現実的です。
指名検索と直接流入を太らせる:検索仕様に左右されない資産を作る
中長期で効くのはこちらです。AI Overviewsが削るのは「あなたのことを知らない人が情報収集の途中でたまたま訪れる」流入です。逆に社名やサービス名で検索してくれる人、メールマガジンやSNSから直接来てくれる人は削られません。記事の読者にメール登録やSNSフォローの導線を用意する、月に一度は独自データや事例など「この会社ならでは」のコンテンツを出す、といった地道な積み重ねが、検索仕様の変化に対する最も確実な保険になります。GA4で「Organic Search以外のチャネル比率」を四半期ごとに追い、この比率を少しずつ上げることを目標に据えると進捗が見えます。
引用されても伝わる書き方:本文に名前を残す
見落とされがちなのが3つ目です。AI Overviewsはページ本文の一部を要約して使うため、本文中に社名がなければ「どこの情報か」が概要から抜け落ちます。「当社が支援した製造業30社では」「◯◯株式会社の調査では」のように、主語として社名を自然に織り込んでおくと、要約されてもブランド名が残る可能性が上がります。独自調査の数字に社名を添えるのも同じ理由で有効です。自社が現在AIの回答でどう扱われているかは、AIからの言及状況を確認する方法をまとめた記事の手順で調べられます。打ち手の前にまず現在地を見ておくと、施策の優先順位がつけやすくなります。
過剰反応しないための判断基準
ここまで打ち手を並べておいて逆のことを言うようですが、慌てて大きく動く前に一度立ち止まってください。検索流入の減少がそのまま事業の損失とは限らないからです。次の3点を確認して、対応の規模を決めることをおすすめします。
- 減っているクエリの中身を見る。情報収集型クエリの流入が減っていても、問い合わせや購入につながる比較検討型・指名型のクエリが無傷なら、売上への実害は数字の見た目より小さい場合が多いです。GA4でランディングページ別のCV数を確認し、CVに効いていたページの流入が減っているかを見てください。
- 調査数値を自社に当てはめすぎない。Pewの数値は米国の調査であり、Ahrefsの数値も英語圏キーワード中心の分析です。日本語検索での影響度はクエリ次第で、自社の実測値がすべてに優先します。
- 既存記事の大量削除や全面リライトのような不可逆な対応は最後に回す。AI Overviewsの表示ロジックはまだ変化が続いており、今の表示状況に最適化しすぎると次の変更でまた振り回されます。
「SEOはもう終わり」といった極端な言説に引きずられる必要はありません。検索結果の構造が変わったのは事実ですが、切り分けて実測し、影響のある領域にだけ手を打つという地に足のついた対応で十分に向き合えます。
まとめ
検索流入が減ったとき、最初にやるべきはSearch Consoleでの切り分けです。表示回数と順位が維持されたままクリック率だけ落ちているクエリを特定できれば、AI Overviewsの影響かどうかを根拠を持って判断できます。影響が確認できたら、引用される側に回る記事改善、指名検索と直接流入を育てる中長期施策、本文に社名を残す書き方の3方向で対応する。そして情報収集型クエリ以外が無傷なら過剰反応しない。この順番さえ守れば、原因不明の不安に振り回されることはなくなります。
自社サイトがAI検索でどう扱われているか一度プロの目で確認したいという方には、無料LLMO診断をご用意しています。現状把握の入り口としてお気軽にご活用ください。
よくある質問(FAQ)
AI Overviewsはすべての検索で表示されますか?
いいえ。表示されるのは主に情報収集型の検索です。Ahrefsの2025年の調査では、AI Overviewsが表示されるキーワードの99.2%が情報収集型でした。指名検索や購入直前の検索では表示されにくいため、影響はサイトのクエリ構成によって大きく異なります。
AI Overviewsに引用されれば流入は回復しますか?
大きな回復は見込みにくいです。Pew Research Centerの2025年の調査では、AI Overviews内の出典リンクがクリックされたのは約1%でした。引用獲得は流入の切り札ではなく、検索面での露出とブランド認知を維持する施策と考え、並行して指名検索や直接流入を育てるのが現実的です。
自社ページをAI Overviewsに使われないようにできますか?
nosnippetやmax-snippetなどのタグで抜粋の利用を制限することは技術的に可能です。ただしこれらは通常の検索結果のスニペット表示にも影響し、検索結果上の見え方が悪化してクリックがさらに減るおそれがあります。流入を守る目的での利用は原則おすすめしません。
流入が何%減ったらAI Overviewsの影響と判断してよいですか?
減少率だけでは判断できません。判断の根拠は減り方の「形」です。表示回数と平均掲載順位が維持されたままクリック率だけが下がり、それが情報収集型クエリに集中していて、実際の検索画面でAI Overviewsの表示を確認できたとき、影響の可能性が高いと判断できます。本文の切り分け手順を順に確認してください。