データ人材の一人目を採ろうとして、手が止まります。求人を出しても応募が来ません。来ても、その人が本当に力になるのか見極められません。思い切って採っても、期待していた分析業務とのギャップで、早々に辞めてしまいました。データ活用の体制づくりを任された方から、わたしたちはこうした声をよく聞きます。

しかし、最初の一人は「正社員をいきなり採る」一択ではありません。採るか借りるかの判断軸さえ持てば、無理のない選び方ができます。まずは内製と外注を早見表で見比べてみてください。

観点内製(採用)外注(パートナー)
立ち上げの速さ採用に数か月かかるすぐ動ける
コスト年収の約3倍の総コストが続く委託費+管理の手間。必要な間だけ
知見の残り方社内に残る任せきりだと残らない(要件は社内に持つ)
向くフェーズ運用が回り始めた段階立ち上げ期・専門性が要るとき

最初の一人は「自社の詰まり」に合わせる

採用の前に、どの役割が要るかを決めます。データがバラバラで使えないなら整備のエンジニア、数字はあるのに活かせていないなら分析のアナリストです。役割の選び方はデータ活用を担うチームの作り方にまとめています。最初から何でもできる万能人材を探すと、いつまでも見つかりません。今いちばん効く一人に絞ります。

コストの目安を押さえる

判断にはコスト感が欠かせません。社員を一人雇うと、人件費は給与そのものではなく、社会保険や賞与、設備・間接費まで含めた総コスト(一般に給与の約3倍)で続きます。たとえば年収600万円のアナリストなら、年およそ1,800万円が継続してかかる計算です。一方、外部パートナーは委託費に社内管理の手間(約1.2倍)を見ます。月60万円で頼むなら年720万円、管理込みで約860万円、しかも必要な期間だけで済みます。

だからこそ、立ち上げ期はスピードが速く必要な間だけで済む外注が向き、運用が安定してきたら知見が社内に残る内製へ寄せる、という使い分けが現実的です。

いきなり正社員でなくてよい

「採る」と決めても、雇用形態の選択肢は一つではありません。立ち上げ期は、軽い形から始めると失敗が小さくて済みます。

形態向いている場面
外部パートナー・顧問立ち上げの設計と型づくり。最初の伴走
副業・業務委託特定の分析や基盤づくりをスポットで
正社員運用が回り、継続して任せる役割がある

副業やパートナーで一緒に働いてから、相性を見て正社員に、という流れも有効です。いきなり正社員1本に賭けるより、リスクを抑えられます。

面接で「整地地獄」を見抜く

優秀なデータ人材が早く辞める典型は、採用時に期待した分析でなく、データの整地(クレンジングや手作業の統合)ばかりさせられるケースです。これは採る側の見極めでも防げます。面接で次のように聞くと、相手の志向と、自社が受け入れられる準備が見えてきます。

  • 「前職で、分析以外に時間を取られた業務は何でしたか」:整地に追われた経験と、その受け止め方が分かる。
  • 「意思決定を変えた分析で、印象に残っているものは」:件数志向か、成果志向かが見える。
  • 「データが汚くて揃っていないとき、どう進めますか」:現実への対応力が分かる。

あわせて、自社が整地ばかりさせる環境になっていないかも点検します。辞めていく構造は優秀なデータ人材が辞めていく会社の特徴に詳しくまとめています。採った後に活かし続ける育成と評価はデータ人材を辞めさせない・活かすで扱います。

1年・3年で見るコスト比較

内製と外注のコストは、期間で見え方が変わります。年収600万円のアナリストを例に、ざっくり比べます(内製は給与の約3倍の総コスト、外注は委託費に管理1.2倍を見込む)。

期間内製(正社員)外注(月60万円)
1年約1,800万円約860万円
3年約5,400万円約2,580万円
残るもの知見・人材が社内に蓄積任せきりだと残らない

金額だけ見ると外注が安く映りますが、継続して仕事があるなら内製のほうが知見も残り、長期では効いてきます。外注の強みは「すぐ動ける」「必要な間だけ」です。だからこそ、立ち上げは外注で素早く成果を出し、軌道に乗ったら内製へ乗り換える、という順番が現実的です。

求人票:ありがち vs 効く

応募が来ない求人には、共通の特徴があります。書き方を変えるだけで、出会える人が変わります。

項目ありがち(来ない)効く(来る)
役割「データ全般をお任せ」「散らばった受注データを整え、分析の土台を作る」
業務抽象的(「DX推進」)具体的(「週次の売上集計の自動化から」)
求める人何でもできる万能型「整備が得意な人」と絞る

「何をする人か」が具体的なほど、自分が活躍できそうだと感じた人が応募します。万能人材を求めるほど、かえって誰も手を挙げません。

面接の回答:良い例と危険なサイン

同じ質問でも、回答の中身で見極めがつきます。

質問良い回答危険なサイン
整地に時間を取られた経験は?必要性を理解しつつ、分析に時間を割く工夫を語る「整地ばかりで嫌だった」と不満で終わる
印象に残る分析は?「この分析で◯◯の判断が変わった」と成果を語る手法の自慢に終始し、成果に触れない

見極めると同時に、自社が「整地ばかりさせる職場」になっていないかも省みます。採る側の準備が整っていなければ、誰を採っても続きません。

採用前にやる「受け皿」チェック

採る前に、受け入れ側の準備も点検します。次が整っていないと、誰を採っても整地と孤立で辞めてしまいます。

  • 最低限のデータが、手作業なしで取り出せる状態か(整っていないなら整備を先に)
  • 依頼に「どの判断のためか」を書く受付の仕組みがあるか
  • 件数でなく「変えた意思決定」で評価する用意があるか
  • 相談相手(社内の理解者か外部パートナー)がいるか

受け皿を先に作るほど、採用の成功率は上がります。採った後に活かし続ける具体策はデータ人材を辞めさせない・活かすにまとめています。

まとめ

  • 最初の一人は「自社の詰まり」に合う役割に絞る。万能人材を探さない。
  • 立ち上げは外注、運用は内製。コストは内製=給与の約3倍、外注=委託費×1.2で見る。
  • いきなり正社員でなく、パートナー・副業から相性を見て始める。
  • 面接で整地への向き合い方を聞き、自社の受け入れ準備も点検する。

まずは「整備か分析か」を決め、最初は外部と組んで小さく試してみてください。採用要件づくりや内製・外注の判断だけでも、DE-STKの初回スポット相談を壁打ち相手に使っていただけたらうれしいです。

よくある質問(FAQ)

Q. 応募が集まりません。どうすればよいですか?

A. 万能な一人を求める求人は応募が来にくいものです。役割を「整備」か「分析」に絞り、任せる業務を具体的に書くと、対象が明確になり集まりやすくなります。まずは副業や業務委託で接点を持つのも有効です。

Q. 内製と外注、結局どちらが安いのですか?

A. 期間によります。継続して大量の仕事があるなら内製が割安になり、立ち上げや一時的な専門業務なら外注が割安です。内製は給与の約3倍の総コストが続く点、外注は必要な間だけで済む点を、仕事量と期間に照らして判断します。

Q. 外注すると社内に何も残らないのが不安です。

A. 要件と判断を社内に持ち、成果物やドキュメントの所有を契約で決めれば、知見は残せます。実装は任せても、何をなぜ作るかは社内が握ります。立ち上げ期から内製引き継ぎを前提に進めるのがコツです。