問いは立てました。データもそろいました。けれども、そこから何をどう見ればいいかが分かりません。とりあえずグラフをいくつも作ってみるものの、「で、結局なにが言えるの?」と聞かれると言葉に詰まります。分析と聞くと高度な統計や専用ツールが要る気がして、最初の一歩で身構えてしまう。データ分析を任された方から、わたしたちはこうした声をよく聞きます。

実は、実務の分析で使う「型」は、たった4つです。比較・推移・分解・相関。この4つを知り、問いに応じて選んで組み合わせれば、たいていの「なぜ」にたどり着けます。まずは4つの型の早見表を見てください。自分のいまの問いが、どの型で解けそうかが見えてきます。

答える問いよく使う見せ方
比較何と比べて高い・低い?棒グラフ・表部門別に受注率を並べる
推移増えている・減っている?折れ線グラフ受注率の月次の変化を追う
分解どこで起きている?内訳・ツリー受注率を製品×顧客層で割る
相関何と一緒に動く?散布図訪問回数と受注率の関係を見る

難しい統計はいりません。表計算ソフトの並べ替えとグラフで、4つとも十分にこなせます。ここからは型を1つずつ、いつ使い・どう見せ・何に気をつけるかを、ミニ実例つきで見ていきます。

比較:何と比べるかで意味が変わる

比較は、いちばん基本の型です。数字は単体では良し悪しが分かりません。「受注率15%」と言われても、高いのか低いのか判断できません。何かと比べて、はじめて意味を持ちます。

たとえば部門別に受注率を並べると、「A部門だけが10%で、他は20%前後」と見えてきます。ここで大事なのは、何と比べるかです。前年同月と比べるのか、目標値と比べるのか、他部門と比べるのかで、引き出される打ち手が変わります。比べる相手を間違えると、結論ごとずれます。

比べる相手分かること
前年同月季節要因をそろえて、伸び・落ちを見る
目標値計画に対して足りているか
他部門・他製品どこが突出して良い・悪いか

比較でのつまずきは、条件をそろえずに並べてしまうことです。新規と既存、繁忙期と閑散期を混ぜて比べると、差が出ても理由が分かりません。比べるときは「同じ土俵か」を必ず確かめます。

推移:時間で追うと「いつから」が見える

推移は、時間の流れで数字を追う型です。比較が「横の比べ」なら、推移は「縦の比べ」です。折れ線グラフで月次や週次に並べると、「いつから変わったか」が見えてきます。

たとえば受注率を月次で並べると、「3か月前までは20%前後で安定していたのに、ここ3か月で16%まで落ちている」と分かります。この「いつから」は、原因を探すうえで決定的なヒントになります。落ち始めた時期に何が起きたか(競合の値下げ、担当者の異動、仕様変更)を当たれば、原因にぐっと近づけます。

推移のつまずきは、点で見て一喜一憂することです。ある月だけ下がっても、たまたまかもしれません。数か月の流れで見て、はっきりした傾向なのか、ただのブレなのかを見極めます。あわせて、期間の取り方で印象が変わる点にも注意します。直近1か月だけ切り取ると急落に見えても、1年で見れば例年並み、ということがあります。

分解:原因を1か所に絞り込む

分解は、4つの型のなかで最も打ち手に直結します。全体の数字を、製品別・顧客層別・地域別・期間別などに割っていき、「どこで起きているか」を1か所に絞り込みます。

「受注率が落ちた」では、何をすればいいか分かりません。けれども分解して「製品Aの、新規顧客の、この3か月の受注率だけが落ちている」とまで絞れれば、打ち手は自ずと見えます。漠然と「受注率を上げる施策」を考えるより、原因を一点に追い詰めるほうが、はるかに効く手にたどり着けます。

分解の切り口問いの例
製品・サービス別どの製品で落ちているか
顧客層別(新規/既存)新規と既存のどちらか
地域・拠点別どの拠点で起きているか
担当者・チャネル別どの経路・担当で差があるか

分解のコツは、効きそうな切り口から順に試し、差が大きく出たところをさらに割ることです。製品別で製品Aだけが落ちていたら、次は製品Aを顧客層で割る。こうして1段ずつ深掘りすると、原因の居場所が狭まっていきます。逆に、最初から全項目を細かく割ると、表が数字で埋まり、どこが効くのか見えなくなります。一度に1段、が鉄則です。

相関:一緒に動くものを探す(因果ではない)

相関は、2つの数字が一緒に動くかどうかを見る型です。散布図に点を打つと、「訪問回数が多いほど受注率も高い」といった関係が見えてきます。原因の見当をつけるのに役立ちます。

ただし、相関でいちばん気をつけるべきことがあります。一緒に動くからといって、片方がもう片方の原因とは限りません。「訪問回数が多い営業ほど受注が多い」からといって、全員に訪問を増やさせても受注は増えないことがあります。もともと見込みの高い客に多く訪問していただけ、という場合があるからです。相関はあくまで「一緒に動く」を示すだけで、「だから増やせば効く」までは保証しません。この取り違えは分析でいちばん多い失敗で、対処は解釈の落とし穴でくわしく扱います。

相関は単独で結論にせず、原因の仮説を出す道具として使います。気になる関係が見つかったら、それを分解や比較で裏づけてから打ち手に進みます。

通し実例:4つの型をつなげて原因にたどり着く

型は単独でなく、つなげて使うと力を発揮します。「直近3か月で受注率が下がったのはなぜか」という問いを、4つの型を順に当てて解いてみます。

段階使う型分かったこと
全体を確認推移受注率が3か月で20%→16%に低下
どこで起きたか分解(製品別)製品Aだけ大きく低下、他は横ばい
さらに絞る分解(顧客層別)製品Aの新規顧客で特に低い
関係を探す相関競合の値下げ時期と一致

推移で「いつから」を、分解で「どこで」を突き止め、相関で「何と一緒に」を当てる。ここまで来れば打ち手は明確です。「製品Aの新規向けに、競合の値下げに対抗する提案を用意する」。最初から漠然と施策を考えるより、型を順に当てて原因を一点に絞るほうが、ずっと早く効く手に届きます。型をどう順序立てて使うかはデータ分析の進め方に全体像をまとめています。

どの型から使うか迷ったら

4つあると、どれから手をつけるか迷うかもしれません。多くの場合、推移で全体の動きを掴み、分解で原因の場所を絞り、必要なら相関で関係を探す、という順が自然です。比較はどの型のなかでも顔を出します。迷ったら、まず推移と分解の2つを押さえれば十分に戦えます。

知りたいことまず使う型
変化が起きた時期推移
原因がある場所分解
良い・悪いの判断比較
関係しそうな要因相関

型を使うときのよくある失敗

  • 条件をそろえず比較する:新規と既存、繁忙期と閑散期を混ぜると、差の理由が分かりません。同じ土俵で比べます。
  • 点で一喜一憂する:推移は1点でなく数か月の流れで見ます。期間の取り方で印象が変わる点にも注意します。
  • 一度に細かく分解しすぎる:全項目を割ると数字に埋もれます。1段ずつ、差が出たところを深掘りします。
  • 相関を因果と取り違える:一緒に動く=原因、ではありません。分解や比較で裏づけてから打ち手に進みます。

まとめ

  • 実務の分析は、比較・推移・分解・相関の4つの型で足りる。
  • 比較は「何と比べるか」で意味が変わる。同じ土俵でそろえる。
  • 推移で「いつから」、分解で「どこで」を突き止める。分解は打ち手に直結。
  • 相関は原因の仮説づくりに使い、因果と取り違えない。

まずは手元の数字を1つ選び、推移で時間に並べ、分解で割ってみてください。それだけで「どこで何が起きているか」が見えてきます。立てた問いをどの型で解くか整理したいときは、DE-STKの初回スポット相談を壁打ち相手に使っていただけたらうれしいです。分析の出発点となる問いの立て方は分析の前に「問い」を立てる、結果を読み違えないための注意は解釈の落とし穴にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 4つの型は、どれか1つだけ使ってもいいですか?

A. 構いません。多くの問いは推移と分解の2つで答えが出ます。まず推移で時期を掴み、分解で場所を絞るだけでも十分に打ち手が見えます。相関や比較は、必要になったら足せば十分です。

Q. 散布図や相関の計算が難しそうです。

A. 厳密な相関係数を出さなくても、散布図に点を打って「右肩上がりか」を目で見るだけで十分役立ちます。まずは2つの数字を並べて散布図にしてみてください。関係がありそうかどうかは、見ただけでだいたい掴めます。

Q. 分解は、どこまで細かく割ればいいですか?

A. 差が大きく出る切り口で止めます。製品別で製品Aだけ突出して落ちていたら、製品Aを顧客層で割る。差が出なくなったら、そこが原因の居場所です。打ち手が決められる粒度まで絞れれば十分で、それ以上細かくする必要はありません。