時間をかけてデータを集め、きれいなグラフを作って会議で見せました。ところが返ってくるのは「ふーん」「で、どうするの?」。打ち手につながらないまま、資料だけが増えていきます。あるいは、何から手をつけるか決まらず、とりあえず全部集計してみたものの、結局「何が分かったのか」を自分でも説明できないままになります。データ分析を任された方から、わたしたちはこうした声をよく聞きます。
分析が空回りするのは、能力やツールの問題ではありません。進める順番が抜けているだけです。順番さえ守れば、分析は「集計して終わり」から「打ち手が出る」に変わります。まずは全体像を4ステップで押さえてください。
| ステップ | やること | つまずき |
|---|---|---|
| 1. 問いを立てる | 答えの出る問いに絞る | 「とりあえず集計」で迷子になる |
| 2. データを集める | 問いに必要な分だけ用意する | 全部そろえようとして進まない |
| 3. 型で分析する | 比較・推移・分解・相関で見る | グラフを眺めるだけで終わる |
| 4. 解釈し打ち手にする | 「だから何をするか」まで出す | 誤読して的外れな結論に |
この4つを順に進めるだけで、分析は意思決定につながります。ここからは要点を押さえ、深掘りは各記事に譲ります。
まず「問い」を立てる(ここが9割)
分析の成否は、最初の問いでほぼ決まります。「売上を分析して」では、何を見ればいいか分かりません。「直近3か月で、どの製品の受注率が下がったか」のように、比較・期間・対象が定まった問いにすると、分析は一気に進みます。漠然とした相談を答えの出る問いに変える具体的なやり方は分析の前に「問い」を立てるにまとめています。
問いを立てるコツは、出発点を「ほしい数字」でなく「下したい判断」に置くことです。判断から逆算すると、必要な問いとデータが自然に決まります。
データは「問いに必要な分」だけ集める
問いが決まったら、次はデータです。ここでつまずく人の多くは、「まず全部そろえてから」と考えて動けなくなります。けれども、必要なのは問いに答える分だけです。「製品Aの新規顧客の受注率を前年と比べる」なら、要るのは製品A・新規・受注の直近3か月分と前年同月分だけ。それ以外は後回しで構いません。
データは完璧には揃いません。揃うのを待つほど、分析は遠のきます。まず手元のデータで粗く分析し、足りないと分かったものを後から足すほうが、結局は早く打ち手に届きます。最初に「この問いに、最低限いる列はどれか」を3つ書き出すところから始めてください。集めること自体が目的になると、分析は前に進みません。
分析の4つの型で「なぜ」に迫る
分析というと難しく聞こえますが、使う型は大きく4つだけです。この4つを組み合わせれば、たいていの「なぜ」にたどり着けます。
| 型 | 答える問い | よく使う見せ方 | 例 |
|---|---|---|---|
| 比較 | 何と比べて高い・低い? | 棒グラフ・表 | 部門別の受注率を並べる |
| 推移 | 増えている・減っている? | 折れ線グラフ | 受注率の月次の変化 |
| 分解 | どこで起きている? | 内訳・ツリー | 受注率を製品×顧客層で割る |
| 相関 | 何と一緒に動く? | 散布図 | 訪問回数と受注率の関係 |
それぞれの型の使い方とミニ実例は分析の4つの型で掘り下げます。
通し実例:受注率が下がった原因を突き止める
4ステップと4つの型を、ひとつの例で通してみます。問いは「直近3か月で受注率が下がったのはなぜか」。
| 段階 | 使う型 | 分かったこと |
|---|---|---|
| 全体を確認 | 推移 | 受注率が3か月で20%→16%に低下 |
| どこで起きたか | 分解(製品別) | 製品Aだけが大きく低下、他は横ばい |
| さらに分解 | 分解(顧客層別) | 製品Aの新規顧客で特に低い |
| 関係を見る | 相関 | 競合の値下げ時期と一致 |
ここまで来れば、打ち手が見えます。「製品Aの新規向けに、競合の値下げに対抗する提案を用意する」。最初から「受注率を上げる施策」を漠然と考えるより、分解で原因を1か所に絞り込むほうが、はるかに効く打ち手にたどり着けます。
まずは半日で、ひと回りしてみる
4ステップは、最初から完璧にやろうとすると重く感じます。けれども、粗くでよければ半日でひと回りできます。ある経営企画の担当者が、上司の「最近そろそろ受注が鈍い、なぜか見てくれ」に半日で答えた流れを、時間割で見てみます。
| 時間帯 | やること | この例での中身 |
|---|---|---|
| 午前前半 | 問いを立てる | 「受注が鈍い」→「直近3か月で受注率が下がったのはどの製品か」 |
| 午前後半 | データを絞る | 受注データ3か月分を、製品別・月別に並べる |
| 午後前半 | 型で見る | 推移で全体の低下→分解で製品Aだけ低下→新規で特に低いと判明 |
| 午後後半 | 打ち手にする | 「製品Aの新規向けに競合対策の提案を用意」と一枚にまとめて渡す |
完璧な分析ではありません。けれども、半日で「どこに手を打つか」まで出せました。粗くても一周を早く回し、足りないところを次に足していく。これが、空回りしない分析のいちばんの近道です。最初から大作を目指すより、小さな一周を何度も回すほうが、結局は速く打ち手に届きます。
解釈の落とし穴に気をつける
分析でいちばん怖いのは、誤った解釈です。よくあるのが、相関を因果と取り違えること、平均が実態を隠すこと、外れ値に引っ張られることです。たとえば「訪問回数が多い営業ほど受注が多い」からといって、全員に訪問を増やさせると逆効果になることがあります。見分け方と対処は解釈の落とし穴にまとめています。
分析を「打ち手」で終わらせる
最後に、分析は必ず「だから何をするか」で締めます。「受注率が下がっています」で終わるとただの報告ですが、「製品Aの新規向けに対抗提案を用意します」まで言えば意思決定になります。報告で終わるか打ち手につながるかは、最後の一言で決まります。同じ分析結果でも、締め方ひとつで会議の景色が変わります。
| 報告で終わる言い方 | 打ち手になる言い方 |
|---|---|
| 受注率が下がっています | 製品Aの新規向けに対抗提案を用意します |
| 解約が増えています | 利用が落ちた既存客に、先回りで連絡します |
| この広告は効きが悪いようです | この経路の予算を、受注につながる経路に回します |
右側はどれも、聞いた人がすぐ動けます。分析を打ち手で締める癖がつくと、「で、どうするの?」と返されることがなくなります。会議で分析を打ち手に変える進め方は経営会議を「感覚」から「根拠」へ変える進め方、何を測るかというKPIの設計はKPI設計の基本、見せる画面づくりは使われるダッシュボードの作り方とあわせてご覧ください。
まとめ
- 分析は「問い→集める→型で分析→解釈と打ち手」の順で進める。
- 成否は問いで9割決まる。「ほしい数字」でなく「下したい判断」から立てる。
- 型は比較・推移・分解・相関の4つ。分解で原因を1か所に絞る。
- 相関と因果の取り違えに注意し、必ず「だから何をするか」で締める。
まずは、いま抱えている課題を一つ選び、「下したい判断は何か」から問いを立ててみてください。分析の進め方を一緒に整理したいときは、DE-STKの初回スポット相談を壁打ち相手に使っていただけたらうれしいです。一人で抱え込む前に、気軽に声をかけてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 高度な統計やツールは必要ですか?
A. 多くの実務分析は、比較・推移・分解・相関の4つと表計算ソフトで十分です。高度な統計は、それで答えが出ないときに検討すれば構いません。まずは問いを立て、4つの型で見るところから始めます。
Q. 分析しても打ち手が出ません。
A. たいていは、問いが漠然としているか、分解が足りていません。「どこで起きているか」を製品別・顧客層別・期間別に分解し、原因を1か所に絞ると、打ち手は自然と見えてきます。出発点を「下したい判断」に置き直すのも効果的です。
Q. データが完璧に揃っていないと分析できませんか?
A. いいえ。問いに必要な分だけあれば始められます。すべてを完璧に揃えようとすると、いつまでも進みません。まず手元のデータで粗く分析し、足りないものは後から補うほうが、結果的に早く打ち手に届きます。
Q. 分析にどれくらい時間をかければいいですか?
A. まずは1日で粗く一周することをおすすめします。問いを立て、必要なデータだけで推移と分解をざっと見て、仮の結論まで出します。最初から完璧を目指すより、粗い一周を早く回し、足りないところを足していくほうが、打ち手に早くたどり着けます。時間をかけるほど良い分析になるとは限りません。