生成AIの浸透状況を診断してほしい、と依頼を受けるとき、まず何を見るかで診断の質が決まります。ログを見るだけでは足りず、ヒアリングだけでも足りず、業務プロセスの棚卸しがなければ根本原因は見えません。DX 推進担当として社内で自ら診断を進める場合、あるいは外部支援を選ぶ判断材料が欲しい場合、最低限見るべき10項目を整理します。

項目は、ログ観察・ヒアリング・業務プロセスの3方向に分かれます。10項目すべてを2週間で見きるのが標準的な診断のスコープです。

AI Adoption Support
導入した生成AI、現場で使われていますか?
思い当たる節があれば、まず自社の利用実態を可視化する AI浸透スコア診断(2週間・25万円) が入口として使えます。

10項目の全体像

#項目方法
1利用ログの全体像ログ観察
2部門別・役職別の利用率分布ログ観察
3用途別のプロンプト分類ログ観察
4権限設計の実態情シスヒアリング
5現場担当者の使用状況と諦めた理由現場ヒアリング
6推進担当・情シスの負荷状況推進側ヒアリング
7対象業務プロセスの棚卸し業務プロセス観察
8業務側で連携が必要なマスタ・データの状態情シス+業務ヒアリング
9経営層の期待値と現実のギャップ経営ヒアリング
10既存KPI との整合資料レビュー

10項目を順に見ていきます。ログ観察系(1〜3)から始めて全体像を掴み、ヒアリング系(4〜6, 9)で理由を掘り、業務プロセス系(7〜8)で根本原因に迫る、というのが実務的な進め方です。

項目1〜3: ログ観察系

項目1: 利用ログの全体像

直近60〜90日分の利用ログを、管理コンソール(M365、ChatGPT Enterprise の管理画面、社内 ChatGPT 環境のAPIログ)から取り出します。総ユーザー数、アクティブユーザー数、週次・月次のアクティブ率の推移。まずここで「そもそも使われているか」の輪郭が見えます。

項目2: 部門別・役職別の利用率分布

組織全体のアクティブ率が20%でも、内訳を見ると営業部門は40%、経理部門は5%、といった偏りがあります。この分布を可視化することで、「どの部門から浸透が止まっているか」の優先順位づけができます。役職別も見ると、管理職と実務担当のどちらが使っているか、が分かります。

項目3: 用途別のプロンプト分類

プロンプトの内容を、6〜8カテゴリ(情報検索、文書作成、業務判断支援、顧客対応、コード処理、学習)に分類します。ログ全件は非現実的なので、月次200〜500件のサンプリングを別のLLMで分類するのが実務的です。ここで「経営価値の高い用途にどれだけ使われているか」が見えます。

項目4〜6, 9: ヒアリング系

項目4: 権限設計の実態

情シスへのヒアリングで、AIから業務データがどこまで見えるかを確認します。Copilot なら Graph API 経由の Dynamics/Salesforce 接続の可否、社内 ChatGPT なら RAG に載せているデータソースと権限設計。「使えない」の裏には、権限設計の不整合が潜んでいることが多いです。

項目5: 現場担当者の使用状況と諦めた理由

対象部門の担当者5〜10名に30分ずつヒアリングします。「実際にどう使っているか」「試したが期待した回答にならなかったケース」「今は使っていない理由」の3点。ここで「1度誤答を経験して離脱」「プロンプトの書き方が分からず諦め」といった離脱の理由が具体的に見えます。

項目6: 推進担当・情シスの負荷状況

推進担当と情シスに、AI関連の相談件数、平均対応時間、返信までのリードタイム、を聞きます。相談の集中と滞留の実態が数字で見えると、「兼任1名で回っていない」の構造的な状況が明らかになります。

項目9: 経営層の期待値と現実のギャップ

経営スポンサーへの30分ヒアリングで、AI導入時に期待した成果、現時点で見えている成果、四半期で報告してほしい指標、を確認します。ここが空欄だと、いくら浸透が進んでも「経営が納得する報告」ができません。

項目7〜8: 業務プロセス系

項目7: 対象業務プロセスの棚卸し

AI を埋め込みたい業務プロセスを1〜3件選び、SOPに沿って手順を全部書き出します。営業なら商談準備〜提案書作成〜商談後の議事録、経理なら月次締めの仕訳判断〜レビュー〜報告書作成。この棚卸しがあると、「業務のどの瞬間にAIを呼ぶべきか」のトリガー設計ができます。

項目8: 業務側で連携が必要なマスタ・データの状態

項目7の業務プロセスで参照するデータ(顧客マスタ、勘定科目マスタ、商品マスタ、業務履歴)が、最新か、AIから見えるか、を確認します。「マスタが2年前のダンプ」「顧客情報が3つのシステムに分散」といった状態は、AI活用のボトルネックとして頻繁に見つかります。

項目10: 既存KPI との整合

既存の業績KPI(営業なら受注率、経理なら締め所要日数)と、AI浸透KPIをどう整合させるか、を資料レビューで確認します。切り離されたKPIだと、AI活用の成果が既存業務評価に反映されず、現場のインセンティブが働きません。既存KPI との紐付けが、浸透の持続性を左右します。

診断の出力粒度

10項目を2週間で見きった診断の出力は、次の粒度で仕上げます。

セクション内容分量
観察サマリ10項目それぞれで見えた数字と実態20〜30ページ
見立て浸透しない主要原因(5つの構造的原因のうちどれが該当か)3〜5ページ
優先順位手をつけるべき順に整理1〜2ページ
次の一手の候補打ち手のオプション、コストと期待効果の見立て3〜5ページ

診断はあくまで「見立て」までで、打ち手の設計と実行は別工程です。診断だけで社内の投資判断が進められる粒度を意識するのが、良い診断の条件です。

社内で進める場合と、外部支援を使う場合

10項目を社内リソースで進めることは可能です。ただ、ヒアリングの中立性と、既存の失敗パターンの参照、という点で外部支援には合理性があります。

社内で進める外部支援を使う
時間推進担当が2〜3週間集中できるなら可能2週間で仕上がる
ヒアリングの中立性上下関係が絡み、本音が出にくい初対面なので本音が出やすい
パターン参照自社のケースしか知らない類似案件を10社以上見ている前提で類推できる
コスト内部人件費のみ25万円前後(DE-STK のAI浸透スコア診断の場合)

まとめ

AI浸透スコア診断は、ログ観察・ヒアリング・業務プロセスの3方向10項目で構成します。ログだけでも、ヒアリングだけでも、業務プロセスだけでも足りず、3方向を合わせて初めて構造的な原因が見えます。診断の出力は「見立て」までで、打ち手の設計は別工程として分けるのが健全です。

「うちの場合はどこから手をつけるべきか」の見立てを掴みたい場合は、AI浸透支援 by DE-STKのAI浸透スコア診断(2週間・25万円)が入口として使えます。現状の利用実態、構造的な原因、次に打つべき手の候補まで、社内の投資判断に耐える粒度でお出しします。

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よくある質問

Q. 診断を2週間で見きるのは無理では?

A. 10項目を精密に見ようとすると2ヶ月以上かかりますが、それは診断ではなくコンサルティングです。2週間の診断は「見立てを出すための最小十分な観察」で、精密調査ではありません。ログ観察はまとめて数日、ヒアリングは15〜20名で1週間、業務プロセスは1〜2件で数日、が現実的な配分です。

Q. 診断だけで浸透しない主要原因が本当に分かりますか?

A. 主要原因の8割は10項目で切り分けられます。残り2割は、実際に打ち手を試して分かる「見えなかった要因」で、これは診断の範囲外です。診断は「次に何を試すか」の優先順位を出すもので、100%の因果特定は目的にしません。

Q. 外部支援の診断は、社内の反発を招きませんか?

A. 情シスや推進担当が「外部に評価される」と身構えるケースはあります。診断の目的が「批判ではなく、次の一手の材料集め」だと最初に共有し、成果物のドラフトを社内レビューにかけてから納品する運用にすると、反発は最小化できます。