締切まであと3日。手元のExcelには、まだ資料が届いていない顧問先が18件並んでいます。あなたは受話器を取り、一件ずつかけ始めます。「先月分の通帳コピー、お願いできますか」。半分はつながらず、留守電に同じ用件を吹き込み、折り返しを待つあいだに次の番号を押す。夕方になって「あ、忘れてました、来週でいいですか」と言われ、また来週の自分に督促がひとつ増える。記帳は止まったまま、頭の中の「あの会社まだ」というリストだけが重くなっていきます。

この電話の時間は、あなたにしかできない仕事ではありません。「誰が・いつ・何を出していないか」を把握し、相手に応じた言い方で思い出してもらう。この一連の流れは、手順に落とせば人が張りつかなくても回ります。督促を「その都度がんばること」から「勝手に進む段取り」へ変えるのが、この記事の狙いです。月次の資料回収を自動化するLedgerLens STKの設計思想も、この段取りをそのまま形にしたものです。

なぜ督促はいつまでも「電話と気合い」で終わるのか

督促が属人化する原因は、担当者の努力不足ではありません。仕組みが無いから、努力で埋めるしかない状態になっているだけです。未提出の把握がExcelと記憶に頼っているため、確認そのものに時間がかかる。誰にどこまで催促したかの記録が残らないので、二度同じ電話をかけたり、逆に遠慮して抜けたりする。そして「言いにくい相手」ほど後回しになり、いつも同じ数社が締切を突破していきます。

この状態を抜けるには、督促を3つの層に分けて考えると整理できます。相手に「何を出すか」を最初に渡す層、期日が近づいたら自動で思い出してもらう層、それでも動かないときだけ人が出る層。この3層を、どこで次の手を打つかの日数まで決めてしまえば、電話は「最後の手段」に後退します。

督促を仕組みにする3段の設計と、次の手を打つ日数

仕組みの骨格はシンプルです。月初に依頼と提出リストを自動で配り、締切が近づいたら未提出者だけに段階リマインドを送り、締切を過ぎても動かない相手だけを担当者にエスカレーションする。人が判断すべきは最後の一段だけになります。各段で「何日で次に進むか」をあらかじめ決めておくのが肝心です。決めておかないと、結局その場の判断に戻ってしまいます。

段階タイミングの目安送る相手手段次に進む条件
依頼・提出リスト発行締切の10日前(月初)全顧問先メール/LINE+ポータルに今月の提出リスト締切3日前まで未提出なら1回目へ
1回目リマインド締切の3日前未提出の顧問先のみ自動送信(やわらかめの文面)締切当日まで未提出なら2回目へ
2回目リマインド締切当日なお未提出の顧問先自動送信(標準の文面)締切+2日で未提出ならエスカレーション
担当者へエスカレーション締切+2〜3日担当職員に通知(顧問先には手動連絡)担当者が電話・個別対応残った少数だけ人が対応

ポイントは、電話が登場するのが最後の1行だけという点です。締切の10日前から当日まで、思い出してもらう作業は自動で進みます。18件が未提出でも、1回目・2回目のリマインドで多くが自力で提出し、締切を数日過ぎても動かない数社だけが担当者の手元に上がってくる。この「数社だけ」に集中できるかどうかで、月末の消耗はまったく変わります。日数は事務所の締切運用に合わせて前後させて構いません。大事なのは、日数を先に決めて仕組みに埋め込んでおくことです。

相手を追い詰めない文面設計:3つのトーンとチャネルの使い分け

自動化でつまずきやすいのが文面です。機械的な催促を全社に一律で送ると、長い付き合いの顧問先ほど「事務的になった」と感じます。そこで文面は相手と段階に応じて3つのトーンを用意し、どの段階でどれを使うかを決めておきます。同じ「まだですよ」でも、言い方で受け取られ方はまるで違います。

トーン使いどころ向く相手推奨チャネル
やわらかめ1回目リマインド普段はきちんと出す顧問先、長い付き合いの先LINE(普段の連絡がLINEの先)
標準2回目リマインド提出が遅れがちな先メール(記録が残る)
期限厳守エスカレーション時の最終連絡申告期限が迫る先、常習的に遅れる先メール+担当者の電話

チャネルは「相手が普段見ている場所」で選ぶのが基本です。日ごろLINEでやりとりしている先にかしこまったメールを送っても埋もれます。逆に、期限が絡む重い連絡は後から確認できるメールに寄せると安心です。以下は、そのまま使える文面の例です。事務所名・締切日・提出物を差し替えれば送れます。

やわらかめ(1回目・LINE想定)

◯◯様 いつもお世話になっております。△△会計事務所です。今月分の資料のご提出、◯月◯日(◯)までにお願いできますでしょうか。今月お願いしているのは「通帳コピー・売上データ・経費の領収書」です。ポータルの写真撮影からでもご提出いただけます。ご不明点があればこのままご返信ください。

標準(2回目・メール想定)

件名:【◯月分】資料ご提出のお願い(本日締切)
◯◯様 お世話になっております。△△会計事務所です。◯月分の月次資料につきまして、本日◯月◯日が提出の目安日となっております。現在、下記が未着の状況です。
・通帳コピー(◯月分)
・経費の領収書
ご提出が遅れますと月次のご報告も後ろ倒しになってしまいますので、本日中のご提出にご協力をお願いいたします。お手元での確認が難しい場合は、その旨だけでもご一報ください。

期限厳守(エスカレーション・メール+電話)

件名:【要ご対応】◯月分 資料未着のご連絡
◯◯様 お世話になっております。△△会計事務所の担当◇◇です。◯月分の資料が締切(◯月◯日)を過ぎてもお手元から届いておりません。このままですと申告・ご報告のスケジュールに影響が出るため、◯月◯日までにご提出をお願いいたします。難しい事情がございましたら、代替の期日を相談させていただきますので、本日中にお電話またはご返信をいただけますと助かります。

この3本を段階に割り当てておけば、1回目・2回目は自動送信に任せられます。担当者が言葉を選んで書くのは、最後の「期限厳守」を個別事情に合わせて微調整するときだけ。文面を毎回ゼロから考える負担が消えます。

手作業と仕組みで、督促の時間はどれだけ変わるか

効果は事務所の規模や記帳代行の比率で変わります。ここでは職員8名・顧問先80件・うち要督促30件というモデル事務所での試算例を示します。実績ではなくモデル計算である点はご了承ください。人件費は給与額そのものではなく、社会保険の会社負担・賞与・間接費まで含めた会社の総コスト(一般に給与の約3倍)で換算します。月給30万円なら総コストは月90万円、実働160時間で割ると約5,600円/時が目安です。

項目導入前(手作業)導入後(仕組み化)
督促にかかる月の時間要督促30件 × 平均30分 = 約15時間自動2段階+電話は7件程度 = 約4時間▲約11時間
未提出の把握Excelと記憶を突き合わせて確認未提出者リストが自動で残る確認作業がほぼ不要
催促の記録口頭・付箋で抜け漏れが発生送信ログに履歴が残る二重連絡・抜けが減る
締切超過の顧問先毎月ほぼ同じ数社が突破自動リマインドで大半が自力提出残るのは少数だけ

督促だけで月に約11時間、時給換算で月約6万円(年約73万円)相当の余地が生まれる計算です。前提を半分に見積もっても、月5〜6時間ぶんは残ります。ここで空いた時間を「人を減らす」ために使うのはおすすめしません。督促の電話は職員にとっても気の重い仕事です。その時間を巡回監査や決算前の相談対応に振り向けるほうが、職員にも顧問先にも歓迎され、結果として仕組みが定着します。

よくある質問(FAQ)

自動リマインドを送ると、顧問先に冷たい印象を与えませんか

印象を決めるのは自動かどうかではなく、文面のトーンとタイミングです。1回目はやわらかめの言い回しで、相手が普段見ているLINE等に送る。厳しめの言葉は締切を過ぎた最終段だけに限定する。この設計にすれば、むしろ「毎回ちゃんと知らせてくれる」という安心感につながります。冷たく感じさせるのは、締切直前にいきなり事務的な催促だけが飛ぶ状態のほうです。

顧問先ごとに締切や提出物が違うのですが、一律のルールで回せますか

回せます。締切日と提出リストを顧問先ごとに設定しておけば、リマインドはそれぞれの締切を基準に自動で動きます。「この会社は月末締め」「この会社は通帳コピー不要」といった違いを最初に登録しておくのが、仕組み化の準備の中心です。一度作れば毎月の運用は同じルールで進みます。

高齢でスマホやメールが苦手な顧問先にはどう対応しますか

全件を自動化する必要はありません。デジタルで届く先を自動リマインドに乗せるだけで、電話が必要な相手は「本当に電話が要る少数」に絞られます。結果として、苦手な顧問先に丁寧に電話する余裕がむしろ生まれます。仕組み化の目的は全自動ではなく、人が出るべき相手を減らすことです。

導入するとして、まず何から始めればいいですか

最初の一歩は、いつも締切を過ぎる顧問先を数社挙げ、その先に送っている催促を「1回目・2回目・最終」の3本の文面に書き分けてみることです。ツールを入れる前でも、この3本があれば送るタイミングを決めるだけで督促は整理され始めます。そのうえで自動送信と未提出リストの管理を仕組みに預けると、電話が最後の手段に後退します。

電話にかける時間を、顧問先との対話に戻す

毎月の督促を「その都度がんばること」から「勝手に進む段取り」へ変えれば、あなたが受話器を握る回数はぐっと減ります。空いた時間は、資金繰りの相談や決算前の打ち合わせといった、あなたにしかできない対話に戻せます。「いつも締切を過ぎる数社の督促だけでも仕組みにしたい」という段階からで大丈夫です。月次の資料回収と進捗管理を一本化するLedgerLens STKが、その最初の段取りづくりの相談先になります。まずは自分の事務所の督促パターンを一緒に棚卸しするところから、気軽にご相談ください。

あわせて読みたい