納品先から戻ってきたトラックの荷台が、行きも半分しか埋まっていなかった。倉庫の前を通るたびに「あれ、また空気を運んでいるな」と感じる。しかしその感覚を経営会議で口にすると、必ず「で、それは金額でいくらの無駄なの」と返ってくる。数字で答えられず、話はいつも運送会社との値上げ交渉の話にすり替わっていく。物流部門長なら、この気まずい沈黙に覚えがあるはずです。

トラックの積載率は業界平均で約4割にとどまると言われます。半分以上が空間として運ばれている計算です。ただ、この「4割」を自社の運賃と結びつけて語れる荷主は多くありません。ここでは、積載率を1ポイント上げると必要な台数と運賃がどれだけ動くのかを、前提を明示した試算で示します。そのうえで荷主が自分で打てる打ち手を、対象の絞り込みから効果検証までの順に具体化します。

積載率1ポイントは、運賃でいくらか

結びつきを先に一枚で見せます。下の早見表は、年商150億円・物流費7.8億円規模の中堅メーカーを想定した試算例です。この前提が自社と近いほど、そのまま社内の説明に使えます。

前提意味
売上高150億円/年従業員450名規模の産業機器メーカーを想定
物流費7.8億円/年売上高物流コスト比率5.2%(業界平均並み)
支払運賃5.5億円/年(うち貸切便 3.3億円)物流費の約7割が運賃、うち6割が貸切便という一般的な構成
輸送量11.2万トン/年 ≒ 1日約110台10t車を積載率41.9%で運行している状態

積載率が上がると、同じ荷物を運ぶのに要る台数が減ります。積載率41.9%から42.9%へ、つまり1ポイント上げると、必要台数はおよそ2.3%減る関係になります。台数が減れば貸切便の運賃も同じ割合で軽くなります。貸切運賃3.3億円に2.3%を掛けると、1ポイントあたり約770万円が削減の余地として見えてきます。

計画値である45.0%まで積み上げると、改善幅は3.1ポイント、必要台数はおよそ7%減。同じ計算で約2,300万円規模の余地になります。金額の出し方を1行ずつ追えるように、下の表に計算の道筋を並べました。

改善幅積載率必要台数の変化貸切運賃への効果(試算例)
現状41.9%基準貸切運賃 3.3億円
+1pt42.9%約2.3%減約770万円の削減余地
+3.1pt(計画到達)45.0%約7%減約2,300万円規模の削減余地

ここで大事なのは、この金額が「ツールを入れれば自動で下がる額」ではないことです。可視化は無駄がどこにあるかを指すだけで、台数を実際に減らすのは荷主が打つ施策です。だからこの数字は「削減できます」ではなく「施策を打てばこれだけの余地がある」と読んでください。次からは、その施策の中身に入ります。

荷主が自分で打てる4つの打ち手

積載率の改善は、運送会社に「もっと積んでほしい」と頼む話ではありません。何をどう出すかは荷主が握っています。代表的な打ち手は、出荷ロットの見直し、共同輸配送、パレットの標準化、便の組み替えの4つです。それぞれ、どんな無駄に効くのかを整理します。

打ち手効く無駄荷主がやること
出荷ロットの見直し小口の出荷が多く、半端な台数で便が立ってしまう受注の締め時間を集約し、同一方面の出荷をまとめてから配車する
共同輸配送自社だけでは車格を埋めきれない方面がある近隣拠点や同業と方面・時間帯を合わせ、1台に相乗りさせる
パレットの標準化荷姿がばらばらで積み付けに隙間が生まれるT11型など規格パレットに寄せ、段積み可否を出荷指示に載せる
便の組み替え帰り便が空車、時間帯が偏って車両が余る往復での積み合わせや、翌日回しでも支障ない出荷の平準化を設計する

まず「どのレーンから」を1つに絞る

4つを全社で一斉に始めるとまず失敗します。効くレーンから1本に絞るのが先です。絞り込みの物差しはシンプルで、「便数が多く」「積載率が低く」「貸切便である」レーンほど、1ポイントの改善が大きな金額に化けます。たとえば関東発・群馬方面の10t貸切が週20便あり、平均積載率が35%だとすれば、ここは全社平均より10ポイント近く低い。改善の伸びしろが最も大きい候補です。

時間帯とキャリアでも同じ見方をします。午前中に配車が集中して車両を余らせている方面、特定の運送会社に偏って割り当てている区間は、便の組み替えや共同化の余地が残っていることが多い。着手の順番を決める会議では、こう言えば話が進みます。「まず群馬方面の貸切1本だけ、来月の出荷ロットを木曜締めに寄せて試します。効果が出たら次の方面へ広げます」。対象を1つに切ると、責任者も検証範囲もはっきりします。

施策の前と後を、同じ物差しで測る

打ち手を入れたら、効いたかどうかを数字で確かめます。ここを飛ばすと「やった気」で終わり、次の稟議が通りません。検証は難しくありません。対象レーンについて、施策の前後で「便数」「平均積載率」「支払運賃」を並べるだけです。

群馬方面・10t貸切(例)施策前施策後
月間便数80便72便
平均積載率(推計)35%39%
月間支払運賃384万円346万円

この例では出荷ロットを木曜締めに寄せた結果、便が8本減り、月38万円ぶんの運賃が浮きました。年換算で約450万円。1レーンだけでこの規模です。数字が出れば、次のレーンへ横展開する提案は驚くほど通りやすくなります。逆に効かなかったレーンも「なぜ積み合わせられなかったか」が見え、締め時間なのか荷姿なのか、次の打ち手を選び直せます。

その積載率は「推計」か「実績」か

ここまで積載率の数字を使ってきましたが、その数字がどこから来ているかは正直に押さえておく必要があります。積載率は本来、便ごとの積載重量を最大積載量で割った値です。分母の最大積載量は車格が分かれば決まります。問題は分子で、正確な実積載重量は運送会社側の記録にしかありません。

出し方データ源精度と使いどころ
推計値配車表・出荷実績の重量 × 車格の最大積載量荷主が自社データだけで出せる。初期はこれで方面ごとの高低を掴む。「推計値」と明示するのが誠実
実績値運送会社の運行実績(便ごとの実積載重量)運送会社の月次報告を受け取れる段階で切り替える。改善効果の最終検証はこちらで行う

初期は自社の出荷実績と配車表から「車格×台数からの推計値」を出すのが現実的です。ここで大切なのは、社内にも取引先にも「これは推計です」と言い添えること。実績値のような顔をして出すと、後で運送会社の数字と食い違ったときに信頼を失います。推計でも方面ごとの高い・低いは十分に見えるので、着手先を決めるには足ります。改正物流効率化法が荷待ち・荷役の把握を荷主の努力義務にしたことで、運送会社に実績データの提供を依頼する根拠もできました。推計で当たりをつけ、実績で仕上げる。この二段構えが無理のない進め方です。

荷主のKPIを可視化し、どのレーン・時間帯・キャリアから着手すべきかを絞り込み、施策の前後を同じ物差しで検証する。この一連を1画面にまとめて支援するのが LogiLens STK です。積載率だけでなく、物流コスト比率やCO2、改正物流効率化法の定期報告まで、経営と法定報告の言葉で扱えるように設計しています。

よくある質問(FAQ)

積載率を1ポイント上げるのは、現実的にどのくらい大変ですか

全社平均を一気に上げるのは簡単ではありませんが、特定レーンに絞れば手が届きます。積載率が低いレーンほど伸びしろが大きく、出荷ロットを1日集約するだけで数ポイント動くことも珍しくありません。全社の平均値を目標にするより、低いレーンを1本ずつ引き上げていく積み上げのほうが現実的で、検証もしやすくなります。

共同輸配送は相手探しが難しそうです。どこから始めればいいですか

いきなり同業との共同化を狙う前に、自社の複数拠点や近隣DC間で方面と時間帯を合わせるところから始めるのが取り組みやすいです。社内で完結するため調整の相手が限られ、効果検証もしやすい。そこで積み合わせの型ができてから、方面が重なる取引先や物流事業者へ広げると、話の説得力が増します。

運送会社から実積載のデータをもらえない場合、積載率は測れませんか

測れます。自社の出荷実績の重量と、便ごとの車格から推計値を出せます。着手先を決め、改善の方向を掴むには推計で十分です。ただし社内外に必ず「推計値」と明示してください。実績データは、改正物流効率化法の努力義務を根拠に運送会社と協議し、月次報告として受け取れる段階で切り替えるのが自然な進め方です。

試算に出てくる金額は、自社にそのまま当てはまりますか

本記事の金額は年商150億円・物流費7.8億円・貸切運賃3.3億円という前提モデルに基づく試算例です。貸切便の割合や運賃水準が違えば結果も変わります。自社の支払運賃のうち貸切便ぶんに、改善したい積載率ポイント×2.3%を掛ければ、同じ考え方で自社版の余地を出せます。前提を置き換えて計算してみてください。

「空気を運んでいる」という現場感覚を、金額で語れる状態に変える。その第一歩は、どのレーンの積載率が低いのかを自社データで見えるようにすることです。着手すべき1本の絞り込みと効果検証の設計だけでも、初回相談(30分・無料)で壁打ちにお使いください。物流KPIを経営と法定報告の言葉に翻訳する仕組みは LogiLens STK でご案内しています。

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