関西向けの自社便が、いつも荷台の半分を空けたまま高速に乗っていく。積載率を上げたいのは分かっているのに、そもそも自社の荷量がその方面には足りない。ロットをまとめても、締めを寄せても、無い荷物は生まれません。物流部門長として「これ以上は自社だけでは埋まらない」という壁に突き当たっている方は少なくないはずです。運賃交渉のたびに運送会社から「復路が空いているので単価はこれ以上下げられない」と言われ、その通りだと分かるだけに返す言葉に詰まる。

自社の荷物だけで1台を埋めきれないなら、他の荷主の荷物と一緒に運ぶ。これが共同輸配送の発想です。難しいのは理屈ではなく、誰と、どのルートで、どうやって始めるか。ここでは相手の探し方から対象ルートの選び方、突き合わせに要るデータ、そして効果の見立てまでを順に具体化します。まず自社のどのルートに連携の芽があるかを見えるようにするところが出発点で、その可視化は LogiLens STK が支援する領域です。

なぜ「自社だけ」では積載率が頭打ちになるのか

出荷ロットの集約やパレット標準化は、自社の荷物を効率よく詰める打ち手です。効きはしますが、方面あたりの荷量そのものが少ないルートでは限界があります。週に数便しか立たない地方向けや、往路は積めても復路は空車で戻る区間は、自社の工夫だけでは荷台の空間が構造的に余ります。

共同輸配送は、この「構造的な空き」を別の荷主の荷物で埋める考え方です。ポイントは相手が同業である必要はないこと。求めるのは、方面と時間帯が自社と近く、荷姿が一緒に積める荷主です。たとえば同じ工業団地の別業種メーカーが、同じ関西方面へ、同じ午前便で、パレット貨物を出しているなら、1台に相乗りできる可能性が高い。届け先が違っても、幹線区間を共有して拠点で積み替える形もあります。相手を探す前に、まず「自社のどのルートが相乗り候補か」を決めることが先決です。

共同輸配送をどう始めるか、4つの段階で

いきなり相手を探しに行くと、話が抽象的になって続きません。順番があります。自社の候補ルートを特定し、条件の近い相手を絞り、データを突き合わせて相乗りの現実味を確かめ、1ルートだけで試す。この4段階を一枚にまとめます。

段階やること荷主が用意するもの
1. 対象ルートの特定積載率が低く、便数が少なく、貸切で走っている方面を洗い出す方面別の出荷実績と積載率(推計でよい)
2. 相手候補の絞り込み同方面・同時間帯に荷を出す荷主を探す。同じ団地・同じ運送会社の取引先・業界団体経由が入口対象ルートの方面・時間帯・荷姿の条件表
3. データの突き合わせ互いの出荷実績を同じ粒度で並べ、日付・方面・重量・便が本当に重なるか確認する出荷日・方面・重量・荷姿・便のデータ
4. 小さく試行1ルート・週1便から相乗りを試し、前後の便数と運賃を測る按分ルールの合意と、効果検証の物差し

相手はどこで探すのか

相手探しが最大の心理的ハードルですが、当てのつけ方はいくつかあります。もっとも近いのは同じ運送会社を使っている取引先です。自社の配車担当が「この方面はA社の車も走っている」と知っていることは多く、運送会社に「同方面で積み合わせられる荷主はいないか」と相談すると、運送会社側も車を埋めたいので前向きに動きます。次が同じ工業団地・同じ港湾エリアの他業種メーカー。物理的に出荷元が近ければ集荷の手間が小さく済みます。業界団体や地域の物流研究会、自治体の共同物流マッチング事業も入口になります。

最初の一声はこう切り出せます。「関西向けの午前便がいつも半分空いています。御社も同方面にパレット貨物を出していれば、幹線だけ相乗りして運賃を分け合えないか、一度データを突き合わせてみませんか」。競合でなければ身構えられにくく、運送会社を挟めば具体の車両で話が進みます。

どのデータがあれば連携を検討できるか

共同化の相談は、感覚ではなくデータで始めると早く進みます。相手と突き合わせるべき最小の項目は、出荷実績のうち「いつ・どの方面へ・どれだけの重量を・どんな荷姿で・どの便に載せたか」の5つです。いずれも荷主が自社の基幹システムやWMSから出せるもので、運送会社の協力を待たなくても揃います。

データ項目連携検討での使いどころ
出荷日2026-07-15相手と出荷曜日・頻度が重なるかを見る
方面(届け先エリア)大阪府・兵庫県幹線区間が共有できる方面かを判定
重量・容積480kg / 1.2m32社を足して1台に収まるかを試算
荷姿パレット(T11)/ バラ段積み可否・積み付けの相性を確認
便・車格午前便 / 10t時間帯と車両サイズが合うかを見る

この5項目を方面別・時間帯別に集計して図表にできると、それがそのまま相手との交渉材料になります。「関西方面・午前便で、当社は平均4.1トン。御社が平均3.5トンなら、10t車1台に十分収まります」と数字で示せれば、相手も自社データで裏を取りやすい。逆にここが口頭の「たぶん埋まる」だと、按分の話に進む前に立ち消えます。可視化は、荷姿の相性や重量の合算といった相乗りの成否を、両社が同じ画面で確認するための共通言語になります。

相乗りで積載率が上がると、運賃はどう動くか

効果の見立てを、前提を置いた試算例で示します。年商150億円・物流費7.8億円規模の中堅メーカーを想定します。支払運賃は年5.5億円、うち貸切便が3.3億円という一般的な構成です。積載率の現状は41.9%。ここで、積載率と必要台数の関係を押さえておきます。

改善幅積載率必要台数の変化貸切運賃への効果(試算例)
現状41.9%基準貸切運賃 3.3億円
+1pt42.9%約2.3%減約770万円の削減余地
+3.1pt(計画到達)45.0%約7%減約2,300万円規模の削減余地

積載率を1ポイント上げると必要台数はおよそ2.3%減り、台数が減れば貸切運賃も同じ割合で軽くなります。貸切運賃3.3億円に2.3%を掛けると、1ポイントあたり約770万円が削減の余地として見えます。共同輸配送は、自社だけでは動かせなかったこの積載率を、他社の荷物で押し上げる手段だと捉えてください。1ルートの相乗りを全社の積載率に均すと1ポイント前後の押し上げになる、というのが一つの目安です。

ただし、この770万円は相手との間で分け合う金額です。按分の考え方を1ルートの試算例で通します。関西方面の午前便で、これまで自社が10t貸切を月40便、相手も同方面に月40便を別々に走らせていたとします。積み合わせで幹線を共有し、両社合計の便数が80便から64便へ2割減ったとすると、浮いた運賃は両社の持ち込み重量の比で分けるのが基本です。自社が4.1トン、相手が3.5トンなら、おおむね54対46。仮に両社合計で月120万円の運賃が浮いたなら、自社側の取り分は月約65万円、年で約780万円ぶんの削減余地という並びになります。

ここで区別しておきたいのは、役割の切り分けです。台数や運賃を実際に減らすのは、相手を見つけて按分を合意し、便を組み替える荷主の施策です。ツールがやるのは、どのルートに相乗りの芽があるかを対象特定し、試行の前後で便数・積載率・運賃を同じ物差しで検証すること。だからこの数字は「削減できます」ではなく「施策を打てばこれだけの余地がある」と読んでください。

始める前に正直に見ておきたい3つの壁

共同輸配送は良いことばかりではありません。うまくいかない理由の多くは輸送の技術ではなく、商流と関係の調整にあります。着手前に3つの壁を正直に見ておくと、途中で頓挫しにくくなります。

何が起きるかほぐし方
商流・競合の懸念相手が同業だと出荷量や取引先が見えてしまう。届け先が同じ小売だと販売情報の推測につながる別業種から始める。同業なら共有するのは幹線区間の重量だけに絞り、届け先明細は運送会社側で分離する
コスト按分の難しさ誰がどれだけ得をしたかで揉め、按分ルールが決まらず立ち消える最初に「持ち込み重量の比で分ける」など単純なルールを1つ決め、試行で実額を見てから精緻化する
運行責任と品質の線引き遅延・破損が起きたときの責任、積み込み順や締め時間の主導権が曖昧になる幹事となる荷主か運送会社を1社決め、締め時間・積載順・事故時の連絡経路を試行前に紙1枚で合意する

どの壁も、いきなり全社・全方面で始めようとすると重くのしかかります。逆に1ルート・週1便の試行に切れば、按分は実額で確かめられ、責任分担も小さな範囲で試せます。最初の1本で型ができれば、2本目からの合意は驚くほど早くなります。

よくある質問(FAQ)

共同輸配送の相手は、同業でないと荷姿が合わないのでは

むしろ別業種のほうが始めやすいことが多いです。求めるのは業種の一致ではなく、方面・時間帯・荷姿の一致だからです。同じ工業団地のメーカーが同じ方面へパレット貨物を午前便で出しているなら、扱う製品が違っても1台に積み合わせられます。同業は情報開示の懸念が伴うので、まずは競合しない相手から型を作るほうが調整はスムーズです。

相手候補が見つからない場合、どこから当たればいいですか

最初に相談すべきは、いま使っている運送会社です。運送会社は同方面に走る他荷主の車両を把握しており、車を埋めたい動機もあるため、積み合わせ先の紹介に前向きなことが多いです。次いで同じ工業団地・港湾エリアの他社、業界団体や自治体の共同物流マッチング事業が入口になります。自社の対象ルートの条件を先に固めておくと、相談された側も判断しやすくなります。

コストの分け方はどう決めるのが揉めにくいですか

最初から精緻なルールを作ろうとすると決まりません。試行段階では「持ち込み重量の比で浮いた運賃を分ける」といった単純なルールを1つ置き、実際に走らせて実額を見てから調整するのが現実的です。重量比のほか、容積比や便数比も考えられますが、荷姿がパレット中心なら重量比が扱いやすい。試行の前後で運賃を可視化しておくと、分配の根拠を両社が同じ数字で確認できます。

試算の金額は自社にもそのまま当てはまりますか

本記事の金額は年商150億円・物流費7.8億円・貸切運賃3.3億円という前提モデルに基づく試算例で、貸切便の割合や運賃水準が違えば結果も変わります。自社版は、貸切運賃に「上げたい積載率ポイント×2.3%」を掛ければ同じ考え方で概算できます。共同化の場合は、そこからさらに相手との按分比を掛けたぶんが自社の取り分になります。前提を置き換えて計算してみてください。

「自社だけでは埋まらない」という壁は、相手と荷物を持ち寄れば動きます。最初の一歩は、自社のどのルートに相乗りの芽があるかをデータで見えるようにすること。対象ルートの絞り込みと、相手に示せる方面別の可視化だけでも、初回相談(30分・無料)で壁打ちにお使いください。物流KPIを経営と交渉の言葉に翻訳する仕組みは LogiLens STK でご案内しています。

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