経営会議で「うちの物流費は他社と比べて高いのか、低いのか」と問われて、言葉に詰まった経験はないでしょうか。売上高物流コスト比率が5%台であることまでは経理の資料に載っている。しかし「その5%の中身は何にいくら使っているのか」「どこを削れば下がるのか」と踏み込まれると、運賃と保管料が混ざった総額しか手元になく、答えられない。話はいつも運送会社への値下げ要請に流れ、翌年の比率もほとんど動かない。物流部門を預かる立場なら、この堂々巡りに覚えがあるはずです。

比率を下げる糸口は、総額を睨むことではなく費目に割ることにあります。支払運賃・保管料・荷役費に分け、それぞれ「どの打ち手が効くのか」「いくらの余地があるのか」を分けて見ると、着手する場所が決まります。ここでは前提を明示した試算例で費目ごとの削減余地を示し、その施策が比率をどれだけ動かすかまで通しで追います。着手先の絞り込みだけでも、初回相談(30分・無料)で壁打ちにお使いいただけます。

「5.2%」の中身を、まず費目に割る

売上高物流コスト比率は、物流費を売上高で割った値です。年商150億円・物流費7.8億円の中堅メーカーなら5.2%になります。この一つの数字を睨んでいる限り、下げようがありません。中身を費目に割ると、初めて「どこに手を入れるか」が見えます。下は同じ規模を想定した費目内訳の試算例です。運賃が物流費の約7割を占め、そのまた6割が貸切便という、荷主に一般的な構成を置いています。

前提意味
売上高150億円/年従業員450名規模の産業機器メーカーを想定
物流費7.8億円/年売上高物流コスト比率5.2%(業界平均並み)
支払運賃5.5億円/年(うち貸切便 3.3億円)物流費の約7割が運賃、うち6割が貸切便という一般的な構成
輸送量11.2万トン/年 ≒ 1日約110台10t車を積載率41.9%で運行している状態

この物流費7.8億円を費目に割ると、次のようになります。金額の内訳は一般的な構成比に基づく試算例で、自社の会計データに置き換えて読んでください。大切なのは、費目ごとに「効く打ち手」が違うことです。運賃には積載や便の設計が、荷役費には現場のオペレーションが、保管料には在庫と契約が効きます。総額への値下げ交渉一本槍では、この違いを使えません。

費目金額(試算例)物流費に占める割合削減が効くレバー
支払運賃5.5億円(貸切3.3億円)約70%積載率の向上・便の組み替え・共同輸配送・荷待ち短縮による交渉材料
保管料約1.2億円約15%在庫日数の圧縮・拠点配置の見直し・坪単価と契約形態の再交渉
荷役費約0.8億円約10%入出荷の時間帯平準化・パレット標準化による作業時間短縮・残業の抑制
その他(包装・物流管理費)約0.3億円約4%梱包仕様の見直し・帳票と報告作業の省力化

割合を見れば、着手の優先順位はほぼ決まります。運賃が7割を占める以上、比率を動かす主戦場はここです。ただし運賃は運送会社との関係が絡み、一朝一夕には動きません。だから「運賃の大きな余地を本命に据えつつ、荷役費の確実な小さな余地から先に取る」という二段構えが現実的です。次の節で、費目ごとの余地を金額で見ます。

費目ごとに、削減余地を金額で見る

費目に割ったら、それぞれに「打ち手を打てばいくら軽くなるか」を試算します。ここで注意したいのは、これらが「ツールを入れれば自動で下がる額」ではないことです。可視化は無駄の在りかを指すだけで、実際に台数や作業時間を減らすのは荷主が打つ施策です。だから金額は「削減できます」ではなく「施策を打てばこれだけの余地がある」と読んでください。代表的な3つを、費目に紐づけて並べます。

打ち手効く費目試算の考え方削減余地/年(試算例)
積載率を+1pt上げる支払運賃41.9%→42.9%で必要台数が約2.3%減。貸切運賃3.3億円×2.3%約770万円(計画値45.0%到達なら約2,300万円規模)
荷待ち時間を短縮する支払運賃(交渉材料)84分→60分で1日110台×24分=年約1.1万時間の拘束を返せる約3,300万円相当の拘束。値上げ交渉を抑える最大の材料になる
拠点の残業を平準化する荷役費8〜10時集中を予約制で平準化し現場残業を月80時間圧縮(残業1時間の会社負担 約2,900円)約280万円

運賃の余地:積載率は「推計」から当たりをつける

運賃を下げる本丸は積載率です。41.9%から1ポイント上げると必要台数がおよそ2.3%減り、貸切運賃3.3億円に掛けて年約770万円が余地として見えます。計画値の45.0%まで積み上げれば約2,300万円規模です。ただし全社平均を一気に上げるのは難しいので、便数が多く・積載率が低く・貸切であるレーンを1本に絞って始めます。会議ではこう言えば動きます。「まず群馬方面の10t貸切だけ、来月の出荷を木曜締めに寄せて試します。効果が出たら次の方面へ広げます」。

ここで使う積載率は、初期は自社の出荷実績の重量と車格から出す「推計値」です。正確な実積載は運送会社の記録にしかないため、社内外に必ず「推計です」と言い添えてください。推計でも方面ごとの高い・低いは十分に見え、着手先を決めるには足ります。改正物流効率化法が荷待ち・荷役の把握を荷主の努力義務にしたことで、運送会社へ実績データの提供を依頼する根拠もできました。推計で当たりをつけ、実績で仕上げる二段構えが無理のない進め方です。

荷待ちの余地:金額より交渉材料として効く

荷待ち時間の短縮は、運賃を直接削るというより交渉のカードになります。平均84分を目標の60分に近づけると、1日110台で1台あたり24分、年に約1.1万時間のドライバー拘束を返せます。待機時間料の相場(30分1,500円)で換算すると約3,300万円相当です。これをそのまま「削減額」と書くのは誤りで、荷主の財布に返るのは待機料の請求分と、値上げ交渉を抑えられる効果です。2024年問題の下では、運送会社にとって荷待ちの少ない荷主は選ばれる取引先になります。荷待ちを短くしておくことが、次の運賃改定で最大の材料になります。金額だけでなく、荷主勧告制度やトラックGメンへの対応というレピュテーションの観点でも、放置しないほうが賢明です。

荷役費の余地:現場残業を平準化で削る

荷役費は割合こそ1割ですが、確実に取りやすい余地です。多くの拠点で入出荷が朝8〜10時に集中し、その山をさばくために現場が残業しています。バース予約制で到着を時間帯にならすと、山が崩れ残業が減ります。関東第一DC相当の拠点で現場残業を月80時間圧縮できたとすると、残業1時間あたりの会社負担約2,900円を掛けて年約280万円の余地です。運賃の770万円に比べれば小さいものの、社内だけで完結し、施策から効果までが早い。「まず取れる一勝」として着手し、比率が動く手応えを社内につくるのに向いています。

費目の余地は、比率をどれだけ動かすか

費目ごとの余地を、最後は比率に戻して確かめます。経営に説明するとき効くのは「積載率が」「荷役費が」ではなく「売上高物流コスト比率が5.2%から何%になるか」だからです。先の3つの打ち手のうち、金額が財布に直接返る積載率と荷役費の2つを物流費から引き、比率を計算し直したのが下の表です。荷待ちは交渉材料なので、ここでは比率計算に入れていません。

段階物流費/年売上高物流コスト比率
現状7.80億円5.20%
積載率+1pt(約770万円)+残業平準化(約280万円)約7.70億円約5.13%
積載率を計画値45.0%へ(約2,300万円)+残業平準化(約280万円)約7.54億円約5.03%

比率で見ると、1ポイントの積載率改善と現場残業の平準化だけで5.2%が5.13%へ、積載率を計画値まで引き上げれば5.0%近くまで下がります。0.1〜0.2ポイントの動きは小さく見えるかもしれませんが、金額にすれば年2,500万円規模です。そしてこの表の値は、費目に割って施策を打ち、前後を測ったからこそ経営に示せる数字です。総額だけを睨んでいた頃には出せなかった説明が、費目分解を通すと稟議の言葉になります。

比率は一度下げて終わりではなく、定点で見る

売上高物流コスト比率は、分母が売上高であるがゆえに単月では揺れます。売上が落ちた月は比率が跳ね上がり、繁忙で出荷が増えた月は運賃が膨らむ。だから一度下げて満足するのではなく、費目別に月次で並べて定点観測するのが本来の使い方です。比率が上がった月に「売上が落ちたからか、それとも運賃単価が上がったからか」を費目で切り分けられれば、慌てて値下げ交渉に走る前に原因へ手を打てます。

同業との比較も、比率を継続して見る動機になります。自社が5.2%で同業平均が4%台なら、その1ポイント強がどの費目から来ているのかを費目内訳で当てにいけます。比較の目的は順位づけではなく、自社の弱い費目を特定することです。費目別の月次推移を1画面で追い、どのレーン・どの時間帯・どのキャリアから着手すべきかを絞り込み、施策の前後を同じ物差しで検証する。この一連を経営と法定報告の言葉で扱えるように設計したのが LogiLens STK です。物流コスト比率だけでなく、積載率やCO2、改正物流効率化法の定期報告までを同じデータの上でつなげます。

よくある質問(FAQ)

自社の売上高物流コスト比率が高いのか低いのか、どう判断すればいいですか

総額の比率だけを同業平均と比べても、高い・低いの理由は分かりません。まず自社の比率を支払運賃・保管料・荷役費に割り、費目ごとの割合を出してください。運賃の比率が同業より高ければ積載や便の設計に、保管料が高ければ在庫や拠点配置に弱点があります。判断は総額ではなく費目単位で下すのが正確で、そのまま次の打ち手にもつながります。

費目に割りたいのですが、会計データではまとめて計上されています

物流費が一つの勘定科目に混ざっている場合、勘定科目の切り分けが最初の作業になります。支払運賃・保管料・荷役費を別の補助科目に分けるか、支払先や請求内訳から按分ルールを決めて割り当てます。この切り分けは会計システムにあるデータで完結でき、外部への新規データ依頼は要りません。費目に割れた時点で、削減の議論はぐっと具体的になります。

運賃の値下げ交渉より先に、荷主側でできることはありますか

あります。積載率の向上や便の組み替え、出荷ロットの集約は、運送会社に頼まず荷主が握っている領域です。何をどうまとめて出すかで、必要な台数も運賃も動きます。値下げ要請は関係を消耗させやすく、2024年問題の下では通りにくくもなっています。まず自社の出し方を整えて必要台数を減らし、荷待ちを短くして選ばれる荷主になるほうが、結果として運賃を抑えられます。

試算に出てくる金額や比率は、自社にそのまま当てはまりますか

本記事の数字は年商150億円・物流費7.8億円・貸切運賃3.3億円という前提モデルに基づく試算例です。売上規模や貸切便の割合、運賃水準が違えば結果も変わります。自社の会計データで費目に割り、支払運賃のうち貸切便ぶんに改善したい積載率ポイント×2.3%を掛ければ、同じ考え方で自社版の余地を出せます。前提を置き換えて計算してみてください。

「うちの物流費は高いのか」という問いに、費目の内訳と削減余地で答えられる状態をつくる。その第一歩は、5.2%という総額を支払運賃・保管料・荷役費に割り、どの費目のどのレーンから着手するかを1つ決めることです。費目分解と着手先の絞り込みだけでも、初回相談(30分・無料)で壁打ちにお使いください。物流KPIを経営と法定報告の言葉に翻訳する仕組みは LogiLens STK でご案内しています。

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