月次会議のダッシュボードに、サイトのPVやSNSのフォロワー数が並び、「今月も増えました」と報告します。グラフは右肩上がりです。ところが売上は変わりません。「で、その数字は何に効いているの?」と聞かれて言葉に詰まります。あるいは、KPIは達成しているのに事業は良くなりません。KPIの設計や運用を任された方から、わたしたちはこうした声をよく聞きます。

増えても事業に効かない数字を「バニティ指標(虚栄の指標)」と呼びます。しかし、見分け方さえ分かれば直せます。まずは、よくある言い換えを一覧にしました。自社の指標が左側に入っていないか、確かめてみてください。

悪いKPI(ありがち)なぜ弱いか良い言い換え
サイトのPV売上と関係なく増やせる問い合わせ数・商談化数
SNSのフォロワー数増えても買われない投稿経由の問い合わせ数
架電数数だけ増やせる商談化数・受注率
提案件数雑な提案が増える受注率・受注額
研修の受講率受けただけで終わる研修後に行動が変わった件数
メール送信数反応を見ていない返信率・面談化率
会議の開催数開くこと自体が目的化会議で決まった意思決定の数

共通するのは、「量」から「成果や質」へ寄せていることです。この一点を押さえるだけで、現場の動き方が変わります。

良いKPIと悪いKPI(早見表)

良し悪しは、3つの観点で見分けられます。1つでも右側に当てはまれば、言い換えの候補です。

観点良いKPI悪いKPI
目的との関係ゴールに直結する切れている(バニティ)
動かせるか現場が行動で動かせる数だけ操作できる
分かる速さ早く分かる結果が出るまで遅すぎる

なぜ「測ると裏をかかれる」のか

指標には「測られると、人はその数字を上げる方向に動く」という性質があります。たとえば営業の評価を「提案件数」にしたところ、見込みの薄い相手にまで雑な提案を量産し、件数は増えたのに受注はむしろ減った、という例があります。数字を上げること自体が目的化した典型です。防ぐコツは、量の指標を単独で使わず、必ず質や成果とセットにすることです。

主役KPIには「歯止め」を添える

ひとつの数字だけを追うと、それを上げるために別の何かが犠牲になります。受注率を上げようと安売りすれば、利益は痩せます。主役のKPIには、無理をしていないかを見る歯止めをペアで持たせます。

主役KPI添える歯止め防げること
受注率粗利率安売りでの数字づくり
商談数失注率質の低い商談の乱発
提案件数受注率雑な提案の量産
問い合わせ数商談化率見込みの薄い流入頼み

直し方:3ステップで言い換える

悪い指標に気づいたら、次の3ステップで言い換えます。

ステップやること例(架電数の場合)
1. 目的に戻るその数字を何のために見ていたか本当は受注を増やしたい
2. 成果・質に変える量の指標を成果や率へ商談化数・受注率
3. 歯止めを添える無理が出ないよう1つ足す1件あたりの質(受注率)

自社のKPIを点検する3つの問い

いま追っている指標を、次の3つで点検してみてください。1つでも「いいえ」なら、言い換えの候補です。

  • その数字が上がると、最終ゴールに近づきますか?
  • その数字は、現場の行動で動かせますか?
  • その数字が良いとき、ほかの何かを犠牲にしていませんか?

まとめ

  • 悪いKPIは「量」を測りがち。良いKPIは「成果・質」を測る。
  • 良し悪しは「目的に直結・動かせる・早く分かる」で見分ける。
  • 主役には歯止めをペアで添え、数字づくりを防ぐ。
  • 直すときは「目的に戻る→成果に変える→歯止めを添える」の3ステップ。

まずは毎月報告している数字を3つ挙げ、冒頭の一覧表と3つの問いで点検してみてください。設計の全体像はKPI設計の基本、目標からの分解はKPIツリーの作り方、画面づくりは使われるダッシュボードの作り方にまとめています。「増えているのに効いていない指標」の見直しだけでも、DE-STKの初回スポット相談を壁打ち相手に使っていただけたらうれしいです。

よくある質問(FAQ)

Q. バニティ指標は一切見てはいけないのですか?

A. 参考として見るのは構いません。問題は、それを主役のKPIにして追いかけることです。PVやフォロワー数は状況把握に留め、意思決定の主役には目的に直結する指標を置きます。

Q. 良い指標がデータで取れない場合は?

A. まずは手作業でも近い数字を取り始めます。月1回の手集計でも傾向は見えます。取れないからとバニティ指標で代用すると、誤った打ち手につながります。計測の仕組みは後から整えれば十分です。

Q. 歯止めの指標は必ず必要ですか?

A. 主役のKPIには添えることを強くおすすめします。ひとつの数字だけを追うと、別の何かが犠牲になりやすいからです。受注率には粗利率、というように、無理をしていないかを見る数字を1つ持つと安全です。