各部門に「来期のKPIを出してください」と頼むと、営業は架電数、マーケティングはPV、カスタマーサクセスは対応件数でした。どれも「量」ばかりで、部門ごとにバラバラです。全社の目標とどうつながるのか見えず、各部門が自分の数字を最適化した結果、全体はちぐはぐになります。KPI設計を任された方から、わたしたちはこうした声をよく聞きます。
バラつく原因は、部門に丸投げで出させていることです。全社のゴールから降ろせば、部門の指標は自然とそろいます。下の図のように、1つのゴールに全部門をぶら下げるイメージです。
全社ゴールから降ろす一覧表
各部門の「寄与・主役KPI・現場の行動・避けたい悪いKPI」を1枚にまとめました。まずはこの表を、自社の言葉で埋めるところから始められます。
| 部門 | 全社ゴールへの寄与 | 主役KPI | 現場の行動(例) | 避けたい悪いKPI |
|---|---|---|---|---|
| 営業 | 受注を増やす | 受注率・商談数 | 失注理由の上位3つに毎週対策 | 架電数だけ |
| マーケティング | 質の良い商談を供給 | 商談化したリード数 | 商談化率の高い流入経路に寄せる | PV・フォロワー数 |
| カスタマーサクセス | 継続と追加購入 | 解約率・アップセル率 | 利用が落ちた顧客に先回り連絡 | 対応件数だけ |
| 製造 | 品質・コスト・納期 | 歩留まり・リードタイム | 不良原因の上位を毎週つぶす | 設備稼働率だけ |
| 管理(経理・人事) | 事業を支える質と速さ | 決算スピード・採用リードタイム | 締めや採用の停滞工程を短縮 | 処理件数だけ |
表の読み解き:共通する勘所
部門は違っても、良いKPIの作り方は同じです。表から読み取れる勘所は3つです。
- 「量」でなく「成果・質」を主役に:架電数より受注率、PVより商談化リード数、対応件数より解約率。どの部門も、量の指標は主役から外します。
- 指標と行動をセットで渡す:受注率なら「失注理由の上位3つに毎週対策」のように、現場が明日からできる行動まで降ろします。
- 悪いKPIには歯止めを添える:製造の稼働率には在庫回転率を、営業の商談数には失注率を添え、作りすぎや質の低下を防ぎます。
管理部門のように直接の売上貢献が見えにくい場合も、考え方は同じです。「会社の目標を支える質とスピード」で測り、作業量そのものは主役にしません。
落とし穴:部門KPIを足し上げない
注意点が1つあります。各部門のKPIを単純に足して全社KPIにしてはいけません。部門ごとの最適が、全社の最適とずれることがあるからです。たとえばマーケが商談「数」だけを増やすと、営業は質の低い商談に時間を取られ、受注率が落ちます。各部門が同じゴールを向いているかを、全社の視点で確認するのが経営企画の役割です。
降ろす手順(3ステップ)
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1. ゴールを1つ | 全社のKGIを決める(例:営業利益) |
| 2. 寄与を一言で | 各部門がそこへどう貢献するかを書く |
| 3. 主役と行動へ | 寄与を測る主役KPIを1〜3つ選び、現場の行動まで降ろす |
この順で上から降ろすと、どの部門も同じゴールを向いた指標になります。逆に部門から積み上げるとバラつくので、必ず上から降ろします。
まとめ
- 部門に丸投げすると量の指標が並ぶ。全社ゴールから降ろす。
- どの部門も「量」でなく「成果・質」を主役にし、行動とセットで渡す。
- 悪いKPIには歯止めを添える(稼働率+在庫回転率など)。
- 部門KPIを単純に足し上げない。全社の視点でつながりを確認する。
まずは自社の主要部門について、上の一覧表を1行ずつ埋めてみてください。全体の設計はKPI設計の基本、目標からの分解はKPIツリーの作り方、指標の良し悪しは良いKPIと悪いKPIの見分け方にまとめています。「部門KPIがバラバラで全社とつながらない」整理だけでも、DE-STKの初回スポット相談を壁打ち相手に使っていただけたらうれしいです。
よくある質問(FAQ)
Q. 部門間でKPIが衝突したらどうすればよいですか?
A. 全社のゴールに立ち返って優先順位をつけます。マーケの商談数と営業の受注率が衝突するなら、「商談化したリード数」のように両部門が同じ成果を見る指標に揃えます。衝突は、つながりを示し直す合図です。
Q. 管理部門(経理・人事)のKPIはどう設計しますか?
A. 「会社の目標を支える質とスピード」で考えます。経理なら月次決算の早期化、人事なら採用リードタイムや早期離職率です。量より、事業に効く質・スピードの指標を選びます。
Q. 部門KPIはいくつまでにすべきですか?
A. 各部門も主役は3つまでが目安です。多いほど現場の注意が分散します。主役を3つに絞り、残りは補助として別に置きます。増えすぎたときの直し方はKPIを増やすほど動かないを参照してください。