経営からは「データを活用しろ」と号令が出て、ツールもデータも揃っている。なのに、なぜか前に進まない。あれもこれもと手をつけては中途半端になり、「うちは何が悪いのか」が分からないまま時間だけが過ぎていく。推進を任された方が、よく口にする悩みです。

止まり方には、いくつかの決まった型があります。自社がどの型で詰まっているかを1つ特定できれば、次にやることは自然と決まります。ここでは、よくある4つの詰まりと、それぞれの抜け出し方を挙げます。自社にいちばん近い症状から読んでください。

詰まり1:同じ指標なのに、部署で数字が違う

症状:経営会議で数字を出すと、決まって「その数字、どこから出したの」と聞かれる。営業が言う売上と経理が言う売上が合わない。毎回、前提のすり合わせで時間が溶けていく。

なぜ起きるか:指標の定義が決まっていないからです。たとえば「アクティブユーザー」が、ある部署ではログインした人、別の部署では課金した人を指す。各自がバラバラのExcelや集計で出すので、同じ名前でも中身が違います。

次の一手:全社の用語をすべて統一しようとすると、それ自体が大プロジェクトになって止まります。毎回もめる定義を3つだけ挙げ、それぞれ決める人を1人立てます。決定者は推進担当が勝手に指名できないので、推進会議でスポンサー同席のもと決め、共有ドライブのスプレッドシート1枚に「用語・定義・決定者・決めた日」を残します。

詰まり2:成功した1部署から、横に広がらない

症状:1部署ではうまくいったのに、他部署に「同じようにやってみて」と渡しても、誰も動きません。手順書を配っても使われない。声をかけるほど、こちらだけが空回りしていきます。

なぜ起きるか:横展開を「成功した仕組みを他部署にコピーすること」だと考えているからです。しかし最初の部署がうまくいったのは、手順書があったからではありません。その部署に、自分ごとの強い困りごとと、やりきった人がいたからです。他部署には、同じ困りごとも、やりきる人もいません。そこへ完成品を渡しても、自分の問題を解決しないものは使われません。

つまり、横展開で本当に渡すべきは、完成した仕組み(成果物)ではありません。「自部署の困りごとを見つけて、小さく解決するやり方」です。コピーするのは、解決策ではなく解決の動き方だと考えてください。

次の一手:次の3つを、この順で行います。

  • 完成品を配らない。次の部署では、その部署がいちばん困っている繰り返し作業を一緒に1つ見つけ、その小さな版から解決します。最初の部署のダッシュボードをそのまま渡しても、データも業務も違うので使われません。
  • 着手前に、その部署の「相棒」を1人見つける。困っている当事者が理想です。やりきる人がいない部署は、どれだけ手順書を整えても続きません。相棒が見つからない部署は「まだ早い」と判断し、後回しにします(最初の味方の作り方は味方の作り方と最初の90日で詳しく扱っています)。
  • 成功談は、あなたではなく最初の部署の担当者に語ってもらう。横の部署は、上からの展開より、隣の同僚の実話で動きます。あなたが旗を振るより、現場どうしの口コミのほうが速く伝わります。

横展開がうまくいかない会社の多くは、仕組みを配ることに労力を注いでいます。しかし本当に難しいのは、各部署の困りごとを見極め、相棒を見つけ、定着するまで伴走する設計のほうです。ここを一人で全部署ぶん回すのは現実的ではありません。外部の伴走で「困りごとを解く動き方」の型を作り、それを社内に残していく進め方も有効です。

詰まり3:ダッシュボードを作ったが、誰も見ない

症状:立派なダッシュボードがあるのに、アクセスがほとんどない。作った直後だけ盛り上がり、数週間で誰も開かなくなる。

なぜ起きるか:「見ること」が業務に組み込まれていないからです。見なくても仕事は回るので、わざわざ見ません。

次の一手:新しく作り足すより、既存の業務の流れに1つ埋め込みます。たとえば、朝会の冒頭で必ず1つの指標を全員で見る、週次レポートの作成をやめてダッシュボードを見る運用に変える、と決めます。「いつ・誰が・何のために見るか」を1つ決めるだけで、使われ方が変わります。背景は「とりあえず可視化」が危険信号になる理由で詳しく触れています。

詰まり4:高度化したいが、社内で回らない

症状:分析や予測に進みたいが、毎回外部に依頼している。社内に知見が残らず、少しの変更も外注で、時間もコストもかかる。

なぜ起きるか:内製の担い手がおらず、外部を「丸投げ」で使っているからです。成果物は残っても、作り方の型が社内に残りません。

次の一手:外部は「丸投げ」ではなく、「型を作って引き継ぐ」前提で使います。あわせて、四半期に1人でよいので、現場メンバーが簡単な分析や更新を自分でできるよう育成枠を確保します。まずは1つの分析を、社内だけで再現できる状態にすることを目標にします。専門人材を「何でも屋」にすると辞めてしまう点は優秀なデータ人材が辞めていく会社の特徴もあわせてご覧ください。

詰まりは、1つずつ抜ける

4つのうち、複数が当てはまることもあります。そのときも、全部を一度に直そうとしないでください。いちばん痛い詰まりを1つ選び、その次の一手だけに集中します。多くの場合、上から順に、定義 → 横展開 → 活用 → 高度化、と詰まっていきます。一段抜ければ、次の詰まりが見えてきます。各詰まりを抜けるための進め方は、データ活用・DX推進の進め方推進ロードマップの作り方で具体化しています。

まとめ

  • 止まり方には型がある。自社の詰まりを1つ特定すれば、次の一手は決まる。
  • 数字が合わないなら、もめる定義を3つ決めて決定者を1人立てる。
  • 一部しか使っていないなら、手順書にして次の1部署へ。
  • 見られないなら、業務の流れに1つ埋め込む。
  • 社内で回らないなら、外部は型を残す使い方にし、育成枠を1人確保する。

自社の詰まりを1つに絞り、次の一手を具体的に決めたいときは、DE-STKの初回スポット相談で、現状を踏まえて一緒に整理できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 複数の詰まりが当てはまります。どれから手をつければよいですか?

A. いちばん痛い1つからです。多くの場合、定義 → 横展開 → 活用 → 高度化の順に詰まるため、上にある詰まりが残っていれば、そこを先に抜けるのが近道です。土台が崩れたまま先へ進んでも、また同じ所で止まります。

Q. 自社がどの詰まりかが分かりません。

A. 直近の会議で「何に時間が溶けているか」を見てください。数字の前提確認で揉めるなら詰まり1、特定部署の話ばかりなら詰まり2、ダッシュボードの話題が出ないなら詰まり3、外注の見積もりばかり議論しているなら詰まり4の可能性が高いです。

Q. どの詰まりにも当てはまりません。

A. すでにデータが回っている状態かもしれません。その場合は、詰まり4(高度化・内製)に進むか、新しい事業課題をデータで解くフェーズに移ります。現状維持で止めず、次に解く課題を1つ決めてください。